増谷英樹

増谷英樹（1942年 - ）は、日本の歴史学者で、特にオーストリア史研究の分野で著名な存在です。東京外国語大学名誉教授であり、オーストリア／ドイツ近代史、ユダヤ史、ウィーン都市史を専門としています。

略歴

東京都で生まれ、1966年に東京大学文学部西洋史学科を卒業後、同大学院人文科学研究科博士課程を中退しました。旧・東京都立大学講師を経て、東京外国語大学助教授、教授を歴任し、2005年に定年退職後、名誉教授となりました。また、獨協大学外国語学部特任教授も務めました。2002年から2004年まで歴史学研究会委員長を務めるなど、学会活動にも積極的に参加していました。

研究内容と業績

増谷氏の研究は、オーストリア、特にウィーンの歴史に焦点を当てています。都市史、ユダヤ史、女性史といった多角的な視点からウィーンの歴史を掘り下げ、その成果は多くの著書や論文として発表されています。日本におけるオーストリア研究の先駆者として、その研究は高く評価されています。

著書

『ビラの中の革命：ウィーン・1848年』（東京大学出版会、1987年）
『歴史のなかのウィーン：都市とユダヤと女たち』（日本エディタースクール出版部、1993年）
『図説 ウィーンの歴史』（河出書房新社、2016年）
『図説 オーストリアの歴史』（河出書房新社、2011年、2023年増補改訂版） - 古田善文氏との共著
『オルタナティヴの歴史学』（有志舎、2013年） - 富永智津子氏、清水透氏との共著

編集

『ウィーン都市地図集成（= Die Historischen Stadtpläne von Wien vom 15. bis 19. Jh.）』（柏書房、1999年）
『移民・難民・外国人労働者と多文化共生：日本とドイツ／歴史と現状』（有志舎、2009年）

共編著

『越境する文化と国民統合』（東京大学出版会、1998年） - 伊藤定良氏と共同編集

翻訳

エルニ・カルツォヴィッチュ著『橋 ユダヤ混血少年の東部戦線』（平凡社、1990年） - 小沢弘明氏と共同翻訳
ヘルバート・シュタイナー著『1848年ウィーンのマルクス』（未來社、1998年）
ヴォルフガング・ヴィッパーマン著『ドイツ戦争責任論争：ドイツ「再」統一とナチズムの「過去」』（未來社、1999年） - 訳者代表
ヘルムート・ラインアルター著『フリーメイソンの歴史と思想：「陰謀論」批判の本格的研究』（三和書籍、2016年） - 上村敏郎氏と共同翻訳・解説
* クラウス・Ｊ・バーデ編『移民のヨーロッパ史：ドイツ・オーストリア・スイス』（東京外国語大学出版会、2021年） - 監訳代表

これらの著書、編集、翻訳活動を通じて、増谷氏はオーストリア史研究の発展に大きく貢献しました。特に、ウィーンの都市史やユダヤ史に関する研究は、日本におけるこの分野の研究を牽引する役割を果たしました。また、翻訳を通じて、海外の重要な研究成果を日本に紹介し、日本の学術界に大きな影響を与えました。

増谷英樹氏は、研究者としてだけでなく、教育者としても多くの人材を育成し、日本の歴史学界に多大な貢献をしました。

もう一度検索