墨塗り教科書

墨塗り教科書について

墨塗り教科書（すみぬりきょうかしょ）は、日本の歴史の中で特に戦後において特異な性質を持つ教科書の形態を指します。この教科書は、教育内容の中で国家主義や戦意を鼓舞する部分を抹消するため、墨で塗りつぶされたものです。特に第二次世界大戦後、日本が占領下にあった時期において、墨塗りが行われました。

背景と歴史

第二次世界大戦が終結すると、日本は連合国軍に占領されました。その際、連合国軍最高司令官総司令部（GHQ）は「終戦に伴ふ教科書図書取扱方に関する件」に基づいて、日本国内で使用されていた教科書の内容を精査しました。不適切だと判断された内容は、書き換えや墨塗りといった処置が施されました。この施策は、教科書の特定の記述に対する国際的な意見に基づいたものであり、戦争を遂行した思想や理念が担わされることを防ぐ意図がありました。

当時の国民学校（現・小学校・中学校）では、特に戦意高揚を目的とした文言が強調されることが多く、GHQの指導により、教員は生徒に墨汁を用いて該当箇所を塗りつぶすよう指示しました。この指示は、生徒自身が手を動かして内容を抹消するものであり、教員参加型で進められました。結果として、多くの教科書ではほとんどの行にわたって抹消線を見ることができました。

教員の追放とその影響

この時期はまた、教職追放令が実施され、多くの教員が職を失いました。推定によると、約45万人の教員の中から約11万5千人が辞職し、さらに約5,200人は教職から追放されたと言われています。これにより、学校教育の現場は大きな影響を受け、教科書の内容や形態に関しても大きな変革が求められることとなりました。

GHQの意図としては、推定1800万人の生徒、40万人の教師、4万の学校を占領政策の道具とみなし、教育現場を通じて次世代にどういった思想を伝えるかに注力するものでした。この取り組みは、日本の教育システム全体に深刻な影響を及ぼしました。

他国での事例

墨塗り教科書の実践は、日本だけに限らず、他の国でも行われることがありました。例えば、韓国においても教育内容の中で特定の記述を抹消する動きが見られました。このような取り組みは、国家の歴史観や教育方針に強く影響を与えることが認識されています。

まとめ

墨塗り教科書は、日本の教育史における特異な事例であり、特に第二次世界大戦後の占領下において、教科書の内容が外部の意向で大きく変わったことを示しています。これは、押し付けられた歴史教育や国家のアイデンティティの喪失、そして教育の自由に対する抑圧を象徴するものであり、その影響は現在に至るまで議論の対象となっています。

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