変わり兜

変わり兜とは

変わり兜は、通常の兜とは異なり、鉢そのものに装飾を施した兜を指します。頭形兜（ずなりかぶと）や突盔形兜（とっぱいなりかぶと）といった基本的な形状の兜をベースに、その上からさらに装飾を加えたり、鉢自体の形状を加工することで、独特なデザインを生み出しました。特に当世具足の一部として、慶長年間をピークに流行しました。その奇抜な形状から「形象兜」や「形兜（なりかぶと）」とも呼ばれます。

歴史と特徴

日本の武将は古くから、戦場で自らの存在を誇示するために、華美な甲冑や軍装を身につけていました。16世紀半ば頃からは、兜の立物だけでなく、鉢全体に装飾を施すという新たな潮流が生まれました。これが変わり兜の始まりです。

変わり兜の装飾には、大きく分けて二つのタイプがあります。一つは、鉢の上に和紙や皮革、動物の毛などを貼り付けて装飾を施すタイプ。もう一つは、鉢の形状自体を加工して、動植物や器物、地形、神仏などをモチーフにした奇抜なデザインを作り出すタイプです。当時の武士の個性や美意識が反映され、多様なデザインが生み出されました。

江戸時代に入ると、工芸技術が著しく向上し、より複雑で装飾性の高い変わり兜が作られるようになりました。烏帽子形、兎形、茄子形、鯰尾形、合子形、一の谷形など、その種類は多岐にわたります。

張懸（はりかけ）について

変わり兜の製作技法の一つに「張懸（はりかけ）」があります。これは、紙や革で作った張り子の上から漆を塗って強度を保つ技法で、この技法で作られた兜は「張懸兜」と呼ばれています。

まとめ

変わり兜は、戦国時代から江戸時代初期にかけての武士たちの美意識と個性を象徴する文化遺産です。その奇抜なデザインと多様性は、当時の武士の精神性や創造性を今に伝えています。現代においても、その芸術的な価値は高く評価されており、歴史ファンや美術愛好家からも注目されています。

関連書籍

宮崎隆旨 編集 『戦国変わり兜』 （角川書店、1984年5月30日）
須藤茂樹 解説『戦国武将変わり兜図鑑』（新人物往来社ビジュアル選書、2010年） ISBN 978-4-404-03858-6
笠原采女 編著 藤本巖 監修『【決定版】 図説・戦国の変わり兜』（学習研究社、2010年） ISBN 978-4-05-605725-6

外部リンク

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