夏の雫

夏の雫 - 三田寛子

「夏の雫」（なつのしずく）は、1982年7月1日にCBS・ソニー（現在のソニー・ミュージックレーベルズ）から発売された、アイドル歌手・三田寛子の通算2枚目のシングルです。前作「駈けてきた処女」に続き、本作も当時の音楽界を代表するクリエイターたちが制作に名を連ねています。

楽曲詳細

このシングルの表題曲「夏の雫」は、作詞を阿木燿子、作曲を井上陽水という、前作と同じ異色のコラボレーションによって生み出されました。アイドル歌謡でありながら、彼らならではの叙情性や独特の感性が織り込まれた歌詞とメロディが特徴です。編曲は、当時YMOでの活動などで注目を集めていた坂本龍一が手掛けており、1980年代初頭らしい都会的で洗練されたサウンドが楽曲に深みを与えています。坂本龍一による編曲は、単なるアイドルポップスの枠を超えた音楽的な挑戦を感じさせる仕上がりです。

この「夏の雫」は、ソニーが当時展開していたオーディオ機器「STEREO 050」（ステレオ・ゼロハン）のテレビコマーシャルソングとして使用され、広く一般に認知されることとなりました。CMタイアップは楽曲のヒットに大きく貢献し、三田寛子の爽やかなイメージと相まって、夏の定番ソングとして多くの人々の記憶に残る一曲となりました。楽曲の演奏時間は3分33秒です。

カップリング曲

シングルには、カップリング曲として「ふたりぽっち物語」が収録されています。こちらも表題曲と同じく、作詞は阿木燿子、作曲は井上陽水が担当しており、シングル全体を通して一貫した世界観が保たれています。しかし、こちらの楽曲の編曲は後藤次利が手掛けています。後藤次利はベーシストとしても高名であり、数多くのヒット曲のアレンジを手掛けてきた実績があります。彼の編曲は、坂本龍一とはまた違ったアプローチで、楽曲に異なる表情を与えています。A面が持つ透明感に対し、B面はまた別のメロディアスな魅力やグルーヴ感を持っているかもしれません。「ふたりぽっち物語」の演奏時間は3分22秒です。

制作陣と時代背景

阿木燿子と井上陽水という組み合わせが三田寛子の初期のシングルを連続して担当したことは、当時のアイドルプロデュースにおいて非常に興味深い点です。彼らが提供する楽曲は、従来のアイドルソングのイメージを更新し、より音楽性の高い方向へ導く一因となりました。また、A面とB面で異なる一流の編曲家（坂本龍一と後藤次利）を起用していることも、このシングルが音楽作品として丁寧に作り込まれていたことを示しています。

1982年という時代は、日本の音楽シーンが多様化し、新しいサウンドや表現方法が次々と生まれていました。アイドルもまた、そうした変化を取り入れながら独自の道を模索していた時期です。「夏の雫」は、質の高いクリエイター陣と人気アイドル、そして大手企業のCMという要素が見事に融合した結果生まれたヒット曲であり、当時の音楽業界の一側面を象徴する作品と言えるでしょう。

収録曲リスト

「夏の雫」は、三田寛子の代表曲の一つとして、今なお多くの人々に愛されています。1982年の夏の情景と共に、彼女のアイドルとしての輝きを伝える重要な作品です。

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