夏山八幡宮火祭りとは？意味をやさしく解説

夏山八幡宮 火祭り

愛知県岡崎市の夏山八幡宮で、創建当時から続く伝統的な火祭りが行われています。この祭りは「奇祭」とも呼ばれ、岡崎市の無形民俗文化財に指定されています。

歴史

永禄元年（1558年）の銘がある獅子頭が宝物として伝承されており、祭りの歴史を物語っています。夏山八幡宮では年4回の中祭が行われ、その一つとして火祭りがあります。以前は2日間にわたる祭礼で、宵祭りの「オタイヤ」を柿平地区が、本祭りの「本楽」を平針地区が担当していました。鬼面は元々平針地区のものを借りていましたが、柿平地区で新たに鬼面が作られるようになりました。明治36年（1903年）からは、平針と柿平が隔年で祭りの仕切りを担当するようになり、現在に至ります。平成17年（2005年）9月16日には、岡崎市の無形民俗文化財に指定されました。

祭りの内容

祭りの準備は、1週間前の注連縄作りとわら細工作りから始まります。当日には、氏子が鉈を手に境内に集まり、周囲の森から生木を切り出して「ソダ山」を築きます。一方、鬼役を務める5人の若者（太夫）は、裸で滝に打たれて身を清めます。この「水垢離」の場所は担当地区によって異なり、平針地区は不動明王を祀る滝、柿平地区は八幡宮裏手にある庚申を祀る川の淵で行われます。

水垢離を終えた太夫たちは、火きり神事に臨みます。矢竹を垂直に立て、両手で錐を揉むようにして火を熾します。30分から1時間経っても採火できない場合は、先輩から再び潔斎するように指示されます。再度、滝で身を清めますが、2度目以降は平針地区の太夫も柿平地区の庚申淵へ行きます。

採火に成功すると太鼓が鳴らされ、ロウソクと火縄に点火されます。その後、神降ろしと呼ばれる儀式が行われます。神職が御神火をソダ山へ点火すると、太夫らはムシロを使って火を扇ぎます。ソダ山の中央の竹が破裂する音を合図に、鬼追いが始まります。雄獅子と雌獅子が噛み合う獅子舞などの所作事の後、参詣者は「ボケ鬼、ボケ鬼」と囃し立て鬼を挑発します。鬼は火のついた木を人々に投げつけ追い回します。鬼役の5人が交代時に相撲、鈴の舞、薙刀の舞、小刀の目利き、獅子打ちの所作を行うのも見どころです。相撲に勝利するか、見本どおりの所作ができれば交代できますが、そうでなければ再度、燃え木を手に参詣者を追いかけることになります。

鬼の燃え木に打たれると厄除けになり、その年は病気にかからないと言われています。

近年では、2018年（平成30年）に開催されましたが、2019年（令和元年）は台風の影響で中止となりました。2021年（令和3年）は新型コロナウイルス感染拡大のため中止されています。

夏山八幡宮火祭りは、地域の人々によって大切に守り続けられている貴重な文化遺産です。

参考文献

- 『新編岡崎市史額田資料編Ⅲ 民俗』岡崎市役所、2011年3月31日、38-49頁。