夏時

夏時（かじ）は、生年は不明ながら、明の成化4年9月25日（1468年10月10日）に没したとされる官僚です。字（あざな）は以正（いせい）といい、本貫は杭州府銭塘県にありました。

生涯

夏時は、永楽16年（1418年）に進士に及第し、官僚としてのキャリアをスタートさせました。最初に任じられたのは、戸科給事中という役職でした。この役職は、財政に関わる重要な部署で、夏時はその才能を早くから発揮しました。

洪熙元年（1425年）、当時の朝廷では貨幣制度の改革が議論されていました。夏時は、宝鈔という紙幣が市場を混乱させ、国の利益にならないと主張し、制度改革に反対しました。しかし、この議論は結局うやむやになってしまいました。その後、皇太子であった朱瞻基（後の宣徳帝）が孝陵を祀るために南京へ赴いた際、夏時は太子に近侍するよう命じられました。道中、夏時は災害の被害を受けた地域を視察し、その状況を太子に報告。官倉を開けて被災民への食糧支援を行いました。太子が北京に戻った後も、夏時は南京に残り、戸科給事中として職務を全うしました。

宣徳帝（朱瞻基）が即位すると、夏時はその才能を高く評価され、尚宝司の職務を代行するよう命じられました。さらに、吏・礼・兵・刑の四科の給事中を兼任し、七篆の職務を滞りなく遂行しました。南京後湖の賦役黄冊の調査を命じられた際には、十四項目の改善策を提言し、その多くが採用されました。また、邳州、徐州、済寧、臨清、武清で旱魃が発生した際には、夏時の要請により、官が派遣されて被災民への救済が行われました。その後、江西按察僉事に抜擢され、知州の柯暹が編纂した『教民条約』と『均徭冊式』を刊行し、法令として施行しました。

正統3年（1438年）、夏時は御史や按察司の官に罪囚を調査させ、冤罪で投獄された人々を釈放するよう上奏しました。また、法を曲げる官吏を逮捕させるよう進言し、公正な裁判の実現に尽力しました。その後、江西布政使左参議に転じ、正統7年（1442年）には、民を救済するための六つの提言を行い、その多くが受け入れられ、実行に移されました。景泰元年（1450年）8月には、広西左布政使に抜擢されました。後に、70歳になる前に官職を辞し、故郷に帰りました。

夏時は、成化4年9月辛巳（1468年10月10日）に亡くなりました。著書に『湖山百詠』1巻があります。

人物

夏時は、清廉潔白で、正義を重んじる人物であったと伝えられています。没後、その墓に異変があったため、郷土の人々は彼を祀り、その祠を「孝廉」と名付けました。これは、夏時の生前の清廉な人柄を偲び、その功績を称えたものです。

まとめ

夏時は、明代の官僚として、財政、司法、行政など幅広い分野で活躍し、優れた能力を発揮しました。特に、民を思う姿勢と公正な判断力は、多くの人々に感銘を与えました。その清廉な人柄は没後も称えられ、郷土の人々に敬愛されました。夏時の生涯は、後世の官僚にとって、模範となるべきものでしょう。

参考文献

* 『明史』巻161 列伝第49

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