外交的保護権

外交的保護権

外交的保護権とは、一つの国がその国籍を持つ個人が他国の国際法に違反した行為によって損害を受けた場合、その国籍国が加害国に対して責任を追及する権限を指します。この権限は、国際法、特に国際慣習法に基づいて確立されたものであり、外交保護とも呼ばれます。

概要

外交的保護権は、国家が国際社会において自己の国民が受けた不当な扱いや損害に対して、他国に対して行動を起こすための手段です。この権限の行使により、国家は場合によって国際裁判所に提訴することも可能です。重要なのは、この権限は国家自身が受けた損害を追及するものであり、国民の損害を代わって追及するのではないという点です。

たとえば、A国の市民XがB国で違法行為によって損害を被った場合、A国はその行為によって自国民が適切に扱われなかった権利が侵害されたことを理由に、自己の損害を回復するためにB国に対して外交的保護権を行使できます。多くの場合、A国が受ける損害はXが受けた損害と同等と見なされます。これは、国際法が国家を主体とする一方で、国民の権利保護も重要なため、両者の調和を図るために設定された制度です。

また、もし外交的保護権の行使に成功した場合でも、国家は被害を受けた国民に賠償金を支払う必要がない点も特筆すべきです。

行使の要件

外交的保護権を行使するには、いくつかの要件があります。まず重要なのは、「自国民」であることに関する特別な条件です。

国籍継続の原則

外交的保護権を発動するには、被害者である个体が損害を受けた時点から追及を行うまで、常に同一の国の国籍を保持している必要があります。この原則は、被害者が損害回復を図るために国籍を変更することを防ぐ目的があります。

真正結合の原則

次に、国籍継続の原則に関連する要件として、「真正な結合」が求められます。国籍は国々によって自由に付与されるものであるものの、その国籍には他国に対する対抗力が必要です。簡易な理由で付与された国籍では、外交的保護権の行使は認められません。

国内救済完了の原則

さらに、被害者は損害を与えた国の国内司法をすべて尽くす必要があります。例えば、A国の国民XがB国で違法に損害を被った場合、XはまずB国内の司法機関で救済を求めなければなりません。この要件を満たした後にのみ、A国が外交的保護権を行使できるのです。

このような要件は、国際法上の正当性や公正さを維持するために重要な役割を果たしています。

補足

企業や船舶、航空機が損害を受けた場合も類似の基準が適用されます。例えば法人の場合は、その法人が設立された国の法律に基づく判断が必要になります。

認容の要件

もちろん、損害を与えた国は、違法行為によって損害を与えたことが前提条件となります。このため、外交的保護権の行使が認められる場面では、違法行為があったことの証明が重要です。

反映文献には、山本草二氏の著作や、小寺彰らの共著による国際法の講義書が含まれます。これらの文献は、外交的保護権についての理解を深めるための重要な参考になります。

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