外国人ノ抵当権ニ関スル法律

外国人ノ抵当権ニ関スル法律（明治32年法律第67号）

外国人ノ抵当権ニ関スル法律は、明治32年3月16日に制定された、外国人が有する抵当権に関する日本の法律です。これは民法に対する特別法としての位置づけでした。法律自体には正式な題名がなく、「外国人ノ抵当権ニ関スル法律」という名称は、一般的に用いられる件名です。

概要

この法律は、第13回帝国議会において政府から提出され、制定されました。制定の背景には、当時の日本における外国人に対する法的な制約がありました。条約改正以前は、外国人に治外法権が認められていたため、土地の取得が認められず、担保権を設定することもできませんでした。条約改正によって外国人が土地の抵当権を取得できるようになったものの、土地の所有権は依然として認められていませんでした。

滌除制度と外国人抵当権者

2003年（平成15年）の民法改正以前には、滌除（てきじょ）という制度が存在しました。これは、抵当権が設定された不動産の所有権、地上権、または永小作権を取得した第三者が、自ら評価した妥当な金額を抵当権者に支払うか供託することで、抵当権を消滅させることができるというものでした。

もし抵当権者が第三者の評価額に不満がある場合、競売（増加競売）を申し立てることができました。増加競売においては、第三取得者の提示金額よりも1割以上高い価格で売却されない場合、抵当権者が自ら1割増しの金額で買い取る必要がありました。しかし、土地の所有権を取得できない外国人が抵当権者である場合、この買取義務を履行することができませんでした。そこで、外国人が抵当権者の場合は、第三取得者の提示金額より1割以上高い価格で売却されない場合、第三取得者の提示金額に1割を加えた額と落札額の差額を、抵当権者である外国人が負担するという特別な措置が設けられていました。

滌除制度は、抵当権者にとって不利な側面があったため、2003年の民法改正によって廃止され、代わりに抵当権消滅請求制度が導入されました。これにより、落札金額が低い場合に抵当権者が買い取る義務はなくなりました。

改正

外国人ノ抵当権ニ関スル法律は、外国人土地法（大正14年4月1日法律第42号）によって改正されました。この改正により、法律の適用範囲が変更されました。改正前は「土地の抵当権者が外国人である場合」に適用されていましたが、改正後は「抵当権者が抵当権の目的となった権利を享有できない場合」に適用されるように変更されました。これにより、外国人土地法などによって所有権を取得できない場合に適用が限定されることとなりました。

廃止

この法律は、担保物権及び民事執行制度の改善のための民法等の一部を改正する法律（平成15年8月1日法律第134号）によって廃止されました。廃止の理由としては、すでに外国人土地法による土地取得制限が撤廃されており、実際には適用される場面がなくなっていたことが挙げられます。

この法律は、日本の法制度における外国人に関する権利の変遷を示す歴史的な意義を持つ法律と言えるでしょう。

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