外山卯三郎

外山卯三郎：美術と教育の道を歩んだ生涯

外山卯三郎（1903年-1980年）は、日本の美術評論家、教育者として知られる人物です。和歌山県に生まれた彼は、京都帝国大学文学部美術史学科を卒業後、美術評論や教育活動を通じて日本の美術界に多大な貢献をしました。

京都帝国大学卒業と初期活動

1928年、京都帝国大学文学部美術史学科を卒業した外山は、同年、同人誌『詩と詩論』の発行に参加するなど、早くから芸術活動に関わっていました。この頃の活動は、後の美術評論家としての活動や教育への関心に繋がったと考えられます。彼の著作リストを見ても、詩や演劇に関する翻訳や研究書が多くを占めており、多様な芸術分野への造詣の深さがうかがえます。例えば、『現代の水彩畫研究』や『詩の型態学的研究』といった著作は、彼の幅広い知識と関心の高さを示すものです。

美術工芸学院設立と戦後の活動

1939年、外山は東京高円寺に画塾「美術工芸学院」を設立しました。これはナチスによって閉鎖されたバウハウスの流れを汲むもので、当時としては画期的な試みだったと言えるでしょう。三木清や西園寺公一といった著名な文化人や、現代アートの前衛画家たちが訪れた一方で、生徒数は10名程度と少なく、経営は困難を極めたようです。しかし、この画塾は、戦後の日本の美術教育に少なからず影響を与えたと考えられます。

戦後、外山は1946年に造形美術協会を創立し、理事長に就任しました。その後も教育活動に力を注ぎ、1953年から女子美術大学講師、1966年から1974年まで武蔵野音楽大学講師・教授を務めました。これらの活動を通して、多くの学生たちに美術に対する深い理解と造形能力を培う機会を与えたことでしょう。

晩年と業績

外山卯三郎は、美術評論家、教育者として多岐にわたる活動を行い、日本の美術界の発展に貢献しました。彼の著作は、美術史研究や芸術理論に貴重な知見を提供しており、現在も研究者や美術愛好家によって高く評価されています。特に、バウハウスの精神を受け継いだ美術工芸学院の設立は、戦時下における困難な状況の中でも、独自の美術教育を実践しようとした彼の情熱を示すものです。

1980年、静岡県御殿場市で77歳で亡くなりましたが、彼の功績は、多くの著作や教育活動を通して、現在も日本の美術界に影響を与え続けています。彼の生涯は、美術に対する情熱と教育への献身を示す、日本の美術史における重要な一頁と言えるでしょう。

著作リスト

『現代の水彩畫研究』（金星堂、1922年）
『詩の型態学的研究』（東京詩学協会、1926年）
『ジアニインの歌章』（ジアンヌ・アラン著、外山卯三郎訳、東京詩学協会、1927年）
『劇作の理論と実際：戯曲的構造の要素に就いての実践的論文』（アルフレッド・ヘンネツキン著、外山卯三郎訳、原始社、1927年）
* 『詩の形態学的研究：特に時間的要素に依る誘導的形態』（厚生閣、1928年）

これらの著作は、外山卯三郎の美術・芸術に対する深い理解と、その多様な表現方法への探求を物語っています。

もう一度検索