外枠発走

外枠発走（そとわくはっそう）

競馬のスタートにおいて、「外枠発走」とは、本来定められた枠番ではなく、大外枠のさらに外側の位置から競走馬を出走させる特別な取り扱いを指します。この措置は、主にレースの公正な実施を確保するため、あるいは物理的な事情により本来のゲートが使用できない場合に適用されます。

具体的には、以下のような状況で外枠発走が選択されます。

適用される主なケース

馬の異常な挙動: 出走馬がゲート入りを極端に嫌がったり、発馬機内で激しく暴れる場合。気性的な問題や癖により、ゲート内で静止できない、あるいはスタート前にゲートを潜り抜けたり、扉を勝手に開けてしまうといった行為に及ぶケースです。
ゲートの物理的故障: 出走予定だった枠のゲート自体に、設置金具の破損など物理的な不具合が生じ、使用が困難になった場合です。

これらの状況において、そのまま本来の枠から発走させた場合、他の出走馬のスタートに影響を与えたり、レースそのものの公平性が損なわれる危険性があると判断された際に、安全かつ公正な競馬を行うための代替措置として外枠発走が適用されます。

中央競馬での取り扱い

日本中央競馬会（JRA）においては、外枠発走となる対象馬は、通常、そのレースの出走頭数における大外枠のさらに二つ外側の位置に設けられたゲートから発走します。例えば、フルゲート16頭立てのレースであれば、本来16番枠に入るところ、この対象馬は18番目のゲートを使用してスタートします。もし枠入りする際に馬が負傷したり、放馬して著しく疲労してしまった場合には、馬体検査の結果次第で競走除外（馬券が購入されていた場合は返還）となる可能性もあります。

地方競馬での導入経緯

地方競馬においては、過去には外枠発走の措置が実施されていませんでした。その理由としては、フルゲートのレースでは他の枠に空きがないこと、地上波での全国的なテレビ中継が少ないため、ゲート金具の破損などが発生しても発走時間を遅らせて修理する時間の猶予があったこと、また宮道式ゲートのようにJRA式に比べて金具部分が少なく破損しにくい構造だったことなどが挙げられます。

しかし、近年では安全対策と公正競馬の観点から見直しが進み、特に南関東の4競馬場（大井、船橋、川崎、浦和）では、2021年度の途中から順次、外枠発走の仕組みが導入されました。そして、その導入後初めての適用例として、2021年8月17日に大井競馬場で行われた第4競走で実際に外枠発走が実施されています。

このように外枠発走は、予測不能なアクシデントや馬の特性に対応し、全ての競走馬が安全に、そして公平な条件下でレースに参加できるよう講じられる、重要な競馬運営上の措置の一つと言えます。

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