多伝囲い

多伝囲い：独特な将棋の囲い方とその戦法

多伝囲いは、主に二枚落ちや四枚落ちの対局で用いられる、特徴的な将棋の囲い方、そして戦法です。金多伝と銀多伝の2種類があり、それぞれに異なる特徴を持っています。

金多伝と銀多伝：守備と攻撃のバランス

金多伝は、玉の守備が堅固な囲いです。横からの攻めに強く、堅実な指し回しを好む棋士に適しています。一方、銀多伝は、攻撃的な展開を目指す際に有効な囲いです。金多伝に比べて守備力は劣りますが、素早い攻めによって相手を圧倒することも可能です。

どちらの囲いにも共通するのは、四筋の歩をしっかりと確保することで、この位を活かす戦略が重要になります。そのため、中飛車との相性が非常に良いです。中飛車は、この四筋の歩を起点に攻めを展開しやすいからです。

しかし、多伝囲いは完成までに時間がかかるという欠点があります。また、中央が厚い分、端が薄くなり、端攻めに弱いという弱点も抱えています。このため、飛車を下段に引いて端攻めを防ぐ対策が用いられることもあります。

銀多伝戦法：二枚落ちにおける強力な戦法

銀多伝戦法は、二枚落ちの対局で下手（後手）が用いる代表的な戦法の一つです。二歩突き切り定跡と並んで知られていますが、下段飛車を利用する点が大きな特徴です。

この戦法は、じっくりと盤面を支配し、確実に勝利を目指すスタイルに適しています。積極的に攻め込むタイプではない棋士にも向いています。定跡書やプロ棋士からは、攻めるよりも堅実に戦う棋風の人におすすめの戦法として紹介されています。

銀多伝戦法で重要なのは、四筋の歩を確保した後、下段に飛車を引くことです。状況によっては、角を切って相手の陣地を崩す高度なテクニックも存在します。プロ棋士相手にこのような複雑な変化に対応できるようになれば、相当な実力者と言えるでしょう。

二枚落ちの戦法とはいえ、プロ棋士も修業の一環として銀多伝戦法を学ぶことがあるほど、奥が深く、実践的な戦法なのです。

歴史と評価

多伝囲いは古くから伝わる戦法で、江戸時代から研究され続けてきました。改良が重ねられ、現在では二枚落ちにおける最も優れた定跡の一つとして高く評価されています。

特に銀多伝は、上手側の変化が少ないため、丸暗記も可能という特徴があります。そのため、駒落ちの定跡を学ぶ上で、最初に学ぶ戦法として最適と言えます。

湯川博士の著書『定跡なんかフッとばせ 駒落ち必勝法』では、二枚落ちの下手側視点から「最も有力で下手側が勝ちやすい戦法」として紹介されています。また、先崎学氏の著書『最強の駒落ち』でも、「強くなりたいなら二歩突っ切り、勝ちたいなら銀多伝」と紹介されるなど、その有効性が多くのプロ棋士によって認められています。

まとめ

多伝囲いは、その守備力と攻撃力のバランス、そして奥深い戦術によって、将棋における重要な戦法の一つです。金多伝と銀多伝それぞれの特性を理解し、状況に応じて使い分けることで、二枚落ちや四枚落ちの対局で大きなアドバンテージを得られるでしょう。 特に銀多伝は、初心者からプロまで幅広く活用できる、魅力的な戦法と言えるでしょう。

もう一度検索