中飛車

中飛車：奥深い戦術と多様な展開

中飛車は、将棋における振り飛車戦法の一種です。その名の通り、飛車を盤面中央の5筋に振ることで特徴付けられます。古くから存在する戦法であり、初心者向けの戦法として広く知られてきました。しかし、近年の研究によりプロ棋戦でも頻繁に採用されるなど、その戦術的な奥深さが改めて注目されています。

歴史と発展

中飛車は、非常に歴史の古い戦法です。現存最古の将棋図譜にもその姿を見ることができ、古くから愛されてきた戦法であることが伺えます。「中飛車は玉の頭に尻を乗せ」という川柳にもあるように、かつては初心者向けの戦法として「下手の中飛車」と呼ばれ、軽視される傾向がありました。

しかし、戦後、松田茂行氏による「ツノ銀中飛車」の創案を契機に、プロ棋戦でも通用する戦法へと発展しました。その後、近藤正和氏による「ゴキゲン中飛車」の考案など、攻撃的な中飛車の研究が爆発的に進み、現在では多様な戦法が展開されています。

戦術の特徴

中飛車は、飛車を5筋に振るため、左金の活用が制限されます。そのため、囲いは片美濃囲いなどになりやすく、敵の飛車を自陣に侵入させると危険な状態になりがちです。自陣の効率的な防御と、攻守のバランス感覚が求められる戦法と言えるでしょう。

相振り飛車の際には、お互いに玉を右側に囲うと、飛車の筋が相手玉から遠くなり、自陣は左金の活用が難しい上に、飛車と玉が接近した形となります。このため、相振り飛車では他の振り飛車と比べて採用率が低い傾向がありました。しかし、近年では、玉を左側に囲う「中飛車左穴熊」といった戦法も考案されており、戦術の多様化が進んでいます。

中飛車の種類

中飛車には、様々な派生戦法が存在します。代表的なものを挙げると以下の通りです。

原始中飛車（下手の中飛車）： 角道を止めて攻めまくる戦法。現在ではほとんど見られません。
ツノ銀中飛車： 松田茂行氏らが考案した戦法。バランスが良いが、持久戦には弱い。
風車： 伊藤果氏考案。ツノ銀中飛車に近い駒組みで、飛車を一番手前の段に引くのが特徴です。
ゴキゲン中飛車： 近藤正和氏考案。積極的に攻勢に出る戦法。後手番で多く用いられます。
5筋位取り中飛車： 序盤に5筋の位を取る戦法。
5五龍中飛車（端角中飛車）： 角を端に上げて睨みを利かせる戦法。
カニカニ銀： 児玉孝一氏考案。急戦矢倉の一種で、状況に応じて中飛車に転じる場合があります。
矢倉中飛車： 急戦矢倉の一種。後手番が相矢倉模様から中飛車に振り直す作戦。
平目： 左金を飛車の下に移動させるのが特徴。
中飛車左穴熊： 玉を左側に穴熊に囲う戦法。
矢倉流中飛車： 矢倉規広氏考案。
英ちゃん流中飛車： 山口英夫氏考案。5筋の歩を突かないまま中飛車に振る戦法。
銀多伝： 4筋の位を取って攻めていく戦法。
中原飛車： 中原誠氏考案。相掛かりの後、中原囲いに組み、5六飛と振る戦法。

これらの戦法は、それぞれに特徴があり、相手によって使い分ける必要があります。中飛車の奥深さが伺えます。

まとめ

中飛車は、歴史と奥深さを兼ね備えた将棋の戦法です。初心者からプロまで、幅広い層に愛され、研究されている戦法であり、今後もその発展が期待されます。その多様な戦法と戦術的奥深さから、将棋の魅力を存分に味わえる戦法と言えるでしょう。

もう一度検索