多元接続

多元接続（Multiple Access）とは

多元接続とは、複数の無線局が同一の電波帯域を共有し、同時に情報を送受信するための技術です。無線通信では、利用できる電波帯域が限られているため、この多元接続技術は非常に重要な役割を果たします。複数の無線局が効率的に電波帯域を共有することで、通信容量を増やし、より多くのユーザーが同時に通信できるようになります。多元接続は、電波の有効利用を促進し、無線通信の発展に不可欠な技術と言えるでしょう。

多元接続の必要性

無線通信では、利用できる電波帯域が限られています。もし、各無線局が専用の電波帯域を使用した場合、利用できる無線局の数は大幅に制限されてしまいます。多元接続技術を使用することで、複数の無線局が同一の電波帯域を共有できるようになり、電波資源を効率的に活用することができます。

チャネル割り当て方式

多元接続では、複数の無線局が同時に通信するため、それぞれの無線局が使用するチャネルを適切に割り当てる必要があります。チャネル割り当て方式には、主に以下の2つの方式があります。

要求時割り当て方式（Demand Assignment）

要求時割り当て方式は、無線局が通信を必要とする際に、その都度チャネルを割り当てる方式です。通信を希望する無線局からの要求に応じて、空いているチャネルを割り当てるため、電波資源を効率的に利用できます。トラフィックの変動が大きい状況に適しており、柔軟な運用が可能です。

事前割り当て方式（Pre-Assignment）

事前割り当て方式は、あらかじめ各無線局に固定的にチャネルを割り当てる方式です。各無線局は、割り当てられたチャネルを専有的に使用できるため、安定した通信品質を確保できます。トラフィックが安定している状況に適しており、管理が容易です。

搬送波当たりのチャネル割り当て方法

多元接続では、搬送波に対するチャネルの割り当て方法も重要です。搬送波とは、情報を伝送するために使用される高周波の信号のことで、この搬送波に対してチャネルをどのように割り当てるかによって、通信効率やシステム構成が変わります。

Single Channel Per Carrier (SCPC)

SCPCは、1つの搬送波に対して1つのチャネルを割り当てる方式です。この方式では、各チャネルが独立しているため、チャネル間の干渉を抑制することができます。通信品質が重要な場合に採用されることが多いです。しかし、多くのチャネルを使用する場合には、多くの搬送波が必要になるため、帯域利用効率は低い場合があります。

Multi Channel Per Carrier (MCPC)

MCPCは、1つの搬送波に対して複数のチャネルを割り当てる方式です。この方式では、1つの搬送波で複数のチャネルを伝送できるため、帯域利用効率を高めることができます。しかし、チャネル間での干渉が発生する可能性があり、適切な干渉対策が必要になります。効率的な電波利用が求められる状況で使用されます。

Multi Carrier modulation

マルチキャリア変調は、複数の搬送波を用いて1つのチャネルを構成する変調方式です。この方式では、1つのデータを複数の搬送波に分割して伝送するため、周波数選択性フェージングの影響を軽減することができます。OFDM（直交周波数分割多重）などがこの方式に該当し、高速大容量通信を実現する技術として、広く利用されています。

各方式の比較

これらの多元接続技術は、それぞれ異なる特徴を持ち、用途に応じて最適な方式が選択されます。例えば、要求時割り当て方式は、柔軟なチャネル割り当てが可能ですが、制御が複雑になる場合があります。一方、事前割り当て方式は、制御は容易ですが、割り当てられたチャネルが使用されない場合、電波資源が無駄になる可能性があります。

搬送波当たりのチャネル割り当て方法についても同様で、SCPCは品質重視、MCPCは効率重視、マルチキャリア変調は高速大容量通信というように、目的に応じた選択が重要です。多元接続技術は、無線通信システムを設計する上で、非常に重要な要素であり、各方式の特性を理解した上で、適切に選択する必要があります。