多宝如来

多宝如来：釈迦如来と共に信仰される仏

多宝如来は、大乗仏教において重要な役割を担う如来の一尊です。サンスクリット語ではPrabhūta-ratna、日本語では多宝如来と呼ばれ、その名はサンスクリット語の意訳です。法華経に登場することから、この経典と深い関わりを持つ仏として知られています。

多宝如来は、東方宝浄国という無量の世界を治める教主です。数えきれないほどの宝を持つ国土を統治する仏として描かれることが多いです。特徴的なのは、釈迦如来の説法を深く賛嘆し、その真実性を力強く証明した点です。この逸話は、法華経の見宝塔品に詳細に記されています。

法華経と多宝如来：見宝塔品の説話

法華経の見宝塔品には、釈迦如来が説法中に地中から七宝で飾られた巨大な宝塔が出現する様子が描かれています。宝塔からは、釈迦如来の説法を称える声が響き渡り、その声の主こそが、多宝如来でした。

多宝如来は、釈迦如来の説法の真実性を認め、自らの座を分け与えて共に説法を行いました。この出来事は、多宝如来が法華経の教えを深く信じ、その教えを広めるために誓願を立てていたことを示しています。多宝如来は、十方世界において法華経を説く者があれば、必ず宝塔と共に現れ、その正しさを証明すると誓ったのです。

多宝如来像の造像と安置

この見宝塔品の説話に基づき、多宝如来像は釈迦如来像と並んで造られることが一般的です。単独像は非常に少なく、多くは釈迦如来との二体像として制作されています。特に日蓮宗や法華宗では、多宝如来は釈迦如来に次ぐ重要な仏として位置付けられており、「一塔両尊」と呼ばれる安置形式がよく見られます。これは、宝塔の中に釈迦如来と多宝如来を祀る形式で、法華経信仰の深さを象徴しています。

日蓮宗や法華宗以外でも、多宝如来像は存在します。例えば、奈良東大寺戒壇院にある釈迦如来・多宝如来像は、唐時代の作例として知られています。また、根津美術館所蔵の銅造釈迦如来・多宝如来並坐像は、北魏の太和13年（489年）の銘があり、貴重な歴史的資料となっています。

多宝塔と多宝如来

多宝如来の名前は、多宝塔という仏塔とも関連しています。多宝塔は、多宝如来を祀るための仏塔として建てられることが多く、その荘厳な姿は、多宝如来の慈悲と功徳を象徴しています。

まとめ

多宝如来は、法華経と深く結びついた重要な仏です。釈迦如来と共に信仰され、その慈悲と功徳は、多くの仏教徒に崇敬されています。多宝如来像は、単独像よりも釈迦如来との二体像として造られることが多く、特に日蓮宗や法華宗では重要な位置を占めています。その存在は、法華経の教えの真実性を示す象徴であり続けています。

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