多摩川水害

多摩川水害の概要

多摩川水害（たまがわすいがい）は、多摩川流域で発生した水災害を指します。豊かな流域の歴史の中で、度重なる水害が記録されていますが、特に1974年に発生した水害は、深刻な被害をもたらしました。

1974年の水害

1974年9月、関東地方に大型の台風第16号が上陸しました。台風の接近に伴い、8月31日から降り続いた豪雨は、多摩川の水位を急激に上昇させていきました。特に狛江市の堤防は脆弱で、9月1日には水位が警戒水位を越え、急速に堤防天端まで達しました。

この日は、1923年に関東大震災が起きたことにちなんで防災の日と定められており、狛江市役所でも防災訓練が予定されていましたが、実際の水害が発生し訓練は中止となりました。市は早急に避難命令を発令し、住民は狛江第六小学校や狛江第二中学校に避難しました。

しかし、同日の21時45分、堤防が決壊し始め、翌未明には民家が流される事態に至ります。この結果、堤防の260メートルが決壊し、宅地3000平方メートルが流失、住宅19戸が流される惨事に発展しました。幸いにも避難が完了しており、死傷者はゼロでしたが、流されていく家々は人々の夢を打ち砕くものでした。

当時、周辺は警視庁機動隊によって規制線が張られ、避難住民たちが再び家に戻り貴重品を取りに行くと衝突が発生する場面も見られました。そこで急遽、陸上自衛隊と機動隊が介入し、家財道具の搬出を行うなど、現場は混乱を極めていました。

決壊後、防止策としてテトラポットによる水流の変更が試みられましたが、効果はありませんでした。そこで、陸自と建設省による堰堤爆破が行われることになりました。9月2日には、ヘリコプターで爆薬が運ばれ、数度の試みの後、ついに堰堤の破壊に成功し、本流への流路を開くことができました。

裁判とその後

この水害を受けて、国は堤防復旧や自衛隊による爆破時の近隣建物への被害を賠償したものの、流出した家屋や隣接する土地に対しては賠償しなかったため、被災者たちは1976年に提訴を行いました。裁判は長期にわたり、1979年には一審で国の管理行為に落ち度が認められるも、国は控訴。最終的に1992年、東京高裁が国の管理の不備を指摘し、被災者に対する賠償命令が確定しました。

決壊の碑とその後

狛江市内には、「多摩川決壊の碑」が建立され、当地の歴史を語り継ぐ役割を果たしています。また、被災者の多くはマイホームを失ったことを誇張し、その思いを胸に秘めたまま生き続けています。2024年には、碑の軽量化が図られる予定です。

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