多田佳子

多田佳子（ただ よしこ）氏 - 日本女流棋士制度の黎明期を彩った実力者

多田佳子氏は、1942年（昭和17年）2月7日に東京都大田区に生まれ、日本の将棋界において活躍した元女流棋士です。成城大学を卒業後、アマチュアとして実力を磨き、1974年に女流棋士制度が正式に発足した際、プロの世界へと転じました。女流棋士一期生として、制度の歴史における初期メンバーの一人として名を刻んでいます。2004年（平成16年）に現役を引退しました。

輝かしいアマチュア時代とプロへの道

プロ入り以前、多田氏はアマチュア将棋界において並外れた強さを誇りました。特に女流アマチュア名人戦では、1969年（昭和44年）の第2回大会を皮切りに、1971年（昭和46年）、1973年（昭和48年）、そしてプロ入りを決めた1974年（昭和49年）の第7回大会と、合計4度にわたり優勝を果たしています。この実績は、当時の女流アマチュア棋界における多田氏の圧倒的な実力を物語っており、「アマチュア女王」と称されることもありました。この輝かしいアマチュア時代の活躍が認められ、多田氏は1974年に新設された女流棋士制度において、アマチュアから直接プロ入りを果たした第一期生の一人となりました。アマチュアからの転向であったため、プロの師匠を持たないという珍しい経歴を持っています。プロ入り時の段位は女流二段であり、これは同じく一期生であった蛸島彰子氏の三段に次ぐ、初期女流棋士の中での高い位置づけを示していました。

プロ棋士としての歩み

プロ入り後、多田氏は制度黎明期の女流棋界において中心的な役割を担いました。1975年（昭和50年）には、第2期女流名人戦において挑戦者となります。当時の女流名人であった蛸島彰子氏は無敗を誇っており、多田氏はその牙城に挑みましたが、残念ながら2連敗を喫し、タイトル獲得はなりませんでした。しかし、この挑戦は多田氏の実力と、黎明期におけるトップ棋士としての存在感を示すものでした。

多田氏は長らく第一線で活躍し、1989年（平成元年）3月15日には女流三段に昇段。その後、2004年10月1日をもって現役を引退しました。引退後、2005年（平成17年）4月1日には女流四段に昇段しています。

所属団体と人物にまつわるエピソード

多田氏は、初期は日本将棋連盟に所属しており、当時の女流棋士番号は旧3番でした。その後、日本女子プロ将棋協会（LPSA）の発足に伴い、そちらへ移籍し、LPSA番号2番となりました。しかし、2014年（平成26年）1月31日付でLPSAを退会しています。LPSA独立にあたっては、2007年（平成19年）に日本将棋連盟を退会しています。

多田氏の人物にまつわるエピソードとしては、プロ棋士の近藤正和七段が奨励会時代に、多田氏の自宅に下宿していた時期があることが知られています。また、私生活では、川柳作家として活躍する多田哲朗氏を夫に持ちます。

多田佳子氏は、女流棋士制度が誕生し、日本の将棋界において女性棋士の地位が確立されていく重要な時代を、アマチュア界の第一人者として、またプロの第一期生として駆け抜けた棋士です。その実績と、制度黎明期における役割は、日本の将棋史において重要な位置を占めています。

昇段履歴

1974年10月31日 - 女流二段（プロ入り）
1989年03月15日 - 女流三段
2004年10月01日 - 引退
2005年04月01日 - 女流四段（引退昇段）

主な棋戦歴

1975年 - 第2期 女流名人戦挑戦者

主なアマチュア棋戦優勝歴

1969年 - 第2回女流アマ名人戦 優勝
1971年 - 第4回女流アマ名人戦 優勝
1973年 - 第6回女流アマ名人戦 優勝
* 1974年 - 第7回女流アマ名人戦 優勝

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