多胡辰敬

多胡辰敬（たご ときたか）は、戦国時代の武将であり、出雲国の戦国大名である尼子氏に仕えました。尼子経久、晴久、義久の三代にわたり、その家臣として活躍しました。特に、経久の三男である尼子敬久の与力であったと考えられています。

生涯

明応6年（1497年）に生まれた辰敬は、天文9年（1540年）の吉田郡山城攻めに従軍し、毛利元就らの軍勢と戦いましたが、尼子軍は撃退されました。

天文12年（1543年）には、鰐淵寺の造営を行い、鰐淵寺領の掟を定めるなど、晴久の命を受けて寺社の管理にも携わりました。その後、石見銀山を守る要衝であり、尼子水軍の根拠地かつ貿易港でもあった刺鹿の地にある刺鹿岩山城（現在の島根県大田市久手町刺鹿）の城主となりました。刺鹿は重要な拠点であり、その守備を任されたことは、辰敬の武将としての力量を示すものと言えるでしょう。

天文23年（1554年）の元旦には、月山富田城内で連歌師である宗養を招き、歌を詠んだことが『多胡文書』に記録されています。このことから、辰敬は武将としてだけでなく、文化的な素養も持ち合わせていたことが伺えます。

永禄元年（1558年）には、毛利元就が川本温湯城の小笠原長雄を攻撃しました。この事態に対し、晴久は辰敬を含む援軍を派遣しましたが、温湯城は降伏し、長雄は毛利氏に従属したため、援軍は失敗に終わりました。

永禄5年（1562年）、毛利氏による石見国への侵攻が本格化し、辰敬が居城とする石見国刺鹿岩山城（支城の余勢城とも）も毛利軍の攻撃を受けました。辰敬は城を守るために奮戦しましたが、最終的には城は陥落し、自刃して果てました。

人物像

多胡辰敬は、単なる武将としてだけでなく、政治にも通じ、連歌を嗜むなど、教養豊かな人物でした。自身で『多胡家家訓』を記しており、その内容は諸芸十七箇条からなるものでした。辰敬自身もこの家訓を生涯にわたって実践し続けたと伝えられています。この家訓は、武士としての心得だけでなく、文化や教養の重要性も説いており、辰敬の人物像を深く理解する上で重要な資料となっています。

多胡辰敬は、戦国時代の動乱の中で、尼子氏のために尽力した武将であり、その生涯は、武勇、政治手腕、文化的な素養が融合したものでした。

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