夜の停車駅

夜の停車駅

「夜の停車駅」（よるのていしゃえき）は、NHK-FMで長期にわたり放送された、音楽と朗読を組み合わせた深夜の帯番組です。この番組は、1980年4月13日に放送を開始し、1985年3月16日にレギュラー放送としての歴史に幕を下ろしました。俳優として知られる江守徹がパーソナリティを務め、その落ち着いた語り口で、多くのリスナーに安らぎの時間を提供しました。

番組開始当初の1980年4月から1983年3月までの期間は、毎週日曜日の夜10時30分から11時までの30分間、静かに届けられました。その後、1983年4月からは放送枠が移動・拡大され、毎週土曜日の夜11時から11時55分までの約1時間番組として、最終回を迎える1985年3月まで続けられました。

レギュラー放送終了から時を経て、この番組は再び日の目を見ることになります。2019年と2020年には、俳優の佐々木蔵之介を新たなパーソナリティに迎え、リバイバル版が制作・放送されました。

最初のリバイバルとなる「夜の停車駅 2019夏」は、2019年8月5日から8月9日までの5夜連続で、夜11時から11時50分までの50分枠で放送されました。番組の幕開けには、セルゲイ・ラフマニノフ作曲、アール・ワイルド編曲の「ヴォカリーズ」が蔵島由貴のピアノ演奏で流れ、エンディングには、ジャン・シベリウス作曲の「もみの木 作品75第5」が三浦友理枝のピアノで静かに響き渡るという、クラシック音楽が静謐な雰囲気を醸し出しました。各夜のエピソードは藤井香織が脚本を手掛け、「屋根裏の同居人」「豊かな人生」「マドンナの思惑」「避暑地のきらめき」「真夏のパンジー」の全5話が届けられました。

続く「夜の停車駅 2020新春」は、新年を迎えた2020年1月2日から1月4日までの3夜にわたり、深夜0時から0時50分までの時間帯で放送されました。こちらもパーソナリティは佐々木蔵之介が担当し、オープニングとエンディングの音楽は2019夏と同じクラシック曲が使用されました。藤井香織による脚本で、「憂鬱な分身」「雪山の幻想」「思い出のBAR」の全3話が新たに制作・放送されました。

2020年8月には、「夜の停車駅 2019&2020選」として、過去に放送されたエピソードの中から選りすぐりの回が再放送されました。2020年8月11日から8月15日までの5夜連続、深夜0時から0時50分までの放送で、佐々木蔵之介の朗読、そして同じオープニングとエンディング音楽が再び届けられました。再放送されたエピソードは、「屋根裏の同居人」「マドンナの思惑」「真夏のパンジー」（2019夏より）、「憂鬱な分身」「雪山の幻想」（2020新春より）の計5話でした。

そして、同年冬には「夜の停車駅 2020冬」が放送されました。2020年12月29日から12月31日までの3夜連続、深夜0時から0時50分までの枠で、再び佐々木蔵之介がパーソナリティを務め、クラシック音楽によるオープニングとエンディングも引き継がれました。藤井香織脚本による新たな物語として、「レトロな鍵」「バラのある家」「波打ち際のボールペン」の全3話が放送され、年末の夜を静かに彩りました。

「夜の停車駅」は、落ち着いた音楽と朗読が融合したユニークな形式で、リスナーに心地よい時間を提供した番組です。レギュラー放送時代の江守徹、そしてリバイバル版での佐々木蔵之介という個性豊かな俳優たちが、深夜に響くその声で、聴く者を物語の世界へと誘いました。それぞれの時代において、夜遅く帰宅した人々や、静かな夜を過ごす人々に寄り添う、まさに「停車駅」のような存在だったと言えるでしょう。この番組は、NHK-FMの放送史においても、特別な輝きを放つ一ページを飾っています。

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