夜久弘

夜久弘の生涯と業績

夜久弘（やく ひろし、1945年3月1日 - 2015年1月2日）は、日本の漫画編集者、原作者、さらにスポーツライターとして活躍した人物です。彼の本名は藤原弘であり、養父は日本文芸社の創設者である夜久勉です。

幼少期と教育

夜久は兵庫県朝来郡和田山町（現朝来市）林垣に生まれました。1963年に兵庫県立八鹿高等学校を卒業すると、養父が設立した日本文芸社に入社し、長いキャリアをスタートさせました。

漫画編集者としてのキャリア

夜久は、日本文芸社で主に漫画雑誌の編集に従事しました。彼が担当した代表的な作品には、『野望の王国』があります。1984年には、つげ義春の作品を中心とする漫画雑誌『COMICばく』を創刊し、1987年までその編集長を務めました。その後、同雑誌が終刊となると、夜久は退職し、自身の趣味であるランニングに関するライター活動を開始しました。

ライターとしての転身

退職後は、スポーツライターとして特にウルトラマラソンに焦点を当て、数々の著作を執筆しました。市民ランナーとして各地のマラソン大会に参加し、2004年には「東京夢舞いマラソン」を主催する事務局を設立、事務局長を務めました。さらに、2007年には株式会社ランナーズステーションの取締役として、皇居近くでランナーのためのシャワー施設の運営に携わりました。これらの活動により、彼はランニング界でも多大な影響を与え、2014年には「ランナーズ賞」を受賞する栄誉に輝きました。

つげ論争

1980年代には高野慎三との間で、つげ義春作品の評価を巡る論争が展開されました。高野はつげ作品に絶対的価値があると考える一方、夜久はそれに対し独自の見解を展開しました。彼は、様々な作家や読者が存在する中で、特定の作品だけを特別視することへの疑問を呈し、多様な価値観を尊重すべきだと主張しました。この論争は、批評界においても注目され、夜久の評価が一層高まる契機となりました。

著作一覧

夜久は、漫画の原作や自身の考えをまとめた著書を数多く出版しています。代表作には、以下のようなものがあります。

• - 『COMICばくとつげ義春 もうひとつのマンガ史』1989年、福武書店
• - 『心優しきジョガーたち』1991年、福武書店（後に『ラブリーロードー心優しきジョガーたち』に改題）
• - 『ウルトラマラソンへの道』1992年、ランナーズ社
• - 『ウルトラマラソン　完走の幸せ　リタイアの至福』2001年、ランナーズ社
• - 『決定版!! 100km・ウルトラマラソン』 2002年、ランナーズ社
• - 『メロスたちの夏 : 夜久弘のウルトラマラソン』2008年、ランナーズ社

また、但馬弘介名義では、漫画原作も手掛けており、代表作には『ルート・ゼロ』や『新宿25時』などがあります。

最期

夜久弘は、2015年1月2日に入院先の病院で亡くなりました。彼は、作家として、またランナーとして多くの人々に影響を与え、その業績は今も多くのファンに記憶されています。

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