COMICばく

『COMICばく』の歴史

『COMICばく』（コミックばく）は、1984年から1987年まで日本文芸社が発行していた季刊の漫画雑誌です。この雑誌は、全15号が刊行され、つげ義春の作品を中心に多彩な漫画作品が取り上げられました。編集長の夜久弘は、つげが休筆から復活する際の新作発表の場を提供するためにこの雑誌を創刊しました。「ばく」という名前は、伝説上の動物「獏」に由来し、夢や創造性を吸収して漫画界に新たな風を吹き込む意図がありました。

創刊の背景

『COMICばく』の物語は1983年の冬に始まります。当時つげ義春は休筆中で、その年賀状が日本文芸社の夜久の元に届きました。夜久は、2年ぶりのつげの新作が待たれていることを感じ取り、創刊のアイデアを膨らませました。そして翌年の夏、つげから新作『散歩の日々』が届くと、彼はその作品を発表するための誌面作りに奔走しました。

日本文芸社の『週刊漫画ゴラク』編集長の阿部林一郎は、つげの新作を通じて新たな漫画雑誌を作ることを提案しました。1984年4月30日には創刊号が発売され、表紙は畑中純による色彩豊かな画が飾りました。創刊号には、つげの『散歩の日々』の他、彼を含む多くの個性的な漫画家の作品が掲載されました。

売上と返品の課題

当初、制作チームは3万部の売上を目指していましたが、現実には売上が伸び悩み、創刊号と第2号では7割以上の返品率を記録しました。実売は1万部にも満たず、発刊に向けた意気込みとは裏腹に厳しい状況が続きました。編集部は、つげ義春の名を前面に出して雑誌を売る方針を取りましたが、彼自身は目立つことを嫌い、特集号の企画に抵抗を示しました。

しかし、特集号の発行後には実売部数が初めて回復し、販売数に光明が見えました。それでも、『COMICばく』はその後も部数の低迷から抜け出せず、最終的には休刊へと至ったのです。

編集の苦悩と終焉

夜久は自らの編集方針を維持するために、多くの苦悩を抱えながらも『COMICばく』の編集に情熱を注ぎました。彼は日本文芸社を退社し、フリーランスとして『COMICばく』を支え続けましたが、雑誌の発行は第15号で終了することとなります。この間、つげの精神状態も影響し、結果としてはつげ義春の新作を通じた漫画文化の再生の試みは、短い期間で終息を迎えました。

『COMICばく』は、つげ義春を中心とした個性豊かな作品が集まり、独自の漫画雑誌としての足跡を残しましたが、時代の波や市場の厳しさに飲まれ、歴史の一ページにその名を刻むこととなりました。漫画界における重要な試みとして、その存在を知ることは、今なお読者にとって貴重な経験であることでしょう。

もう一度検索