夜会服 (小説)

小説『夜会服』の概要

『夜会服』（やかいふく）は、三島由紀夫による長御小説であり、1966年から1967年にかけて雑誌『マドモアゼル』に連載された後、1967年9月に集英社から単行本として刊行されました。この作品は、華族時代の西欧式社交パーティーを背景に、社交界に夢中になる母親、社交界に反発する息子、その間に立たされる嫁という三人の人物との心理的な葛藤を描いています。 物語は、乗馬や西洋の風俗を取り入れながら、若い女性の婚約から新婚生活の精神的な葛劇を娯楽的なタッチで綴っていますが、同時に近代日本が抱える本音と建前の葛藤についても言及しています。

作品の背景

『夜会服』には、多くの登場人物が乗馬を楽しむシーンがあり、三島由紀夫は女性の乗馬に美しさを見出したと語っています。この作品以外にも、三島は乗馬を題材にした作品をいくつか発表しています。

あらすじ

物語は、稲垣製薬社長の娘、稲垣絢子が主役です。彼女は乗馬クラブで滝川夫人に見初められ、夫人の息子である滝川俊男と出会います。滝川夫人は息子と絢子の縁談を進め、二人は婚約します。しかし、婚約後の社交界での生活に俊男はうんざりし、母親の社交界から離れたいと考えていますが、絢子はその期待に応えきれずに苦しむことになります。

結婚し、新婚旅行に出た二人は、様々な困難に直面しながらも、愛を深めていくはずでした。しかし、新婚生活が始まると、姑である滝川夫人が干渉し、絢子に対して微妙な態度をとるようになります。特に、夫人が俊男の元恋人について語った際、絢子は心の底から不安に駆られ、姑との関係に悩むことになりました。

俊男は、母の策略に苛立ちを抱くも、絢子を守るためにどうするべきかを悩む姿が描かれています。次第に夫妻の関係は悪化し、滝川夫人は二人の離婚を要求する事態にまで発展します。

登場人物

• - 稲垣絢子: 素直で気品のある娘。愛らしい外見を持ち、社交界においても柔和な印象を与える。
• - 滝川俊男: 知識が豊かで多才な青年だが、社交界の付き合いを嫌う。母親との関係に悩みを抱える。
• - 滝川夫人: 明るく社交的な性格で、上流社会との関係に執着する姑。自分の感情を他人に投影してしまうことがある。

作品評価

評価については、全体としてあまり芳しくはなく、娯楽小説としての側面が強調されがちですが、登場人物の心理描写には評価が見られています。三島の描く登場人物たちは、各々の葛藤と成長を通じて、近代日本の社会問題に対する批判を映し出しています。

結論

『夜会服』は、三島由紀夫らしいキャラクターの深い心理描写と、社交界という舞台を通じて近代日本の矛盾を照らし出す作品です。登場人物たちの複雑な関係性と内面の葛藤を感じながら、三島文学の魅力を体感できる一冊になっています。

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