夜明けのヴァンパイア

『夜明けのヴァンパイア』

『夜明けのヴァンパイア』（原題: Interview with the Vampire）は、アメリカの作家アン・ライスが1979年に発表したゴシックホラー小説です。吸血鬼を自称する男が、自身の半生を語るという形式で物語が進みます。日本では早川書房から翻訳本が出版されています。

アメリカではベストセラーとなり、『ヴァンパイア・クロニクルズ』シリーズの第一作として、その後も多くの続編が発表されました。1994年には映画化もされ、アン・ライス自身が脚本を担当しました。

あらすじ

物語は、ルイ・ド・ポワント・デュ・ラックという若い男が、自身の吸血鬼としての人生を語ることから始まります。18世紀のニューオーリンズで農園主だったルイは、弟の死をきっかけに生きる希望を失っていました。そんな彼に目をつけたのが、美貌の吸血鬼レスタト・デ・リオンコートです。レスタトはルイに「闇の贈り物」を与え、吸血鬼に変えます。

しかし、ルイは人間だった頃の感情を強く残しており、人を殺して血を吸うことに強い嫌悪感を抱きます。彼は動物の血で飢えをしのぎますが、レスタトとの間には次第に溝が生まれていきます。レスタトはルイを繋ぎとめようと、幼い少女クロウディアを吸血鬼に変えます。3人は奇妙な共同生活を送りますが、クロウディアは成長しない体と、成熟していく心のギャップに苦しみ、レスタトへの復讐を誓うのです。

ルイとクロウディアは、レスタトのもとを離れ、ヨーロッパを旅します。そこで彼らは、古い吸血鬼の一団と出会い、吸血鬼の歴史や掟を知ることになります。しかし、クロウディアは悲劇的な運命をたどり、ルイは再び孤独に陥ります。

登場人物

ルイ・ド・ポワント・デュ・ラック: 黒髪の美しい青年。人間だった頃の感情を強く残しており、苦悩する。
レスタト・デ・リオンコート: 金髪碧眼の美貌の吸血鬼。ルイに執着し、彼を翻弄する。
クロウディア: 5歳で吸血鬼にされた少女。成長しない体に苦しみ、レスタトを憎む。
アーマンド: 鳶色の髪を持つ、劇場の吸血鬼たちのリーダー。

『ポーの一族』との類似性

日本では、萩尾望都による名作少女漫画『ポーの一族』との類似性が指摘されることがあります。永遠の命を持つ少年（吸血鬼）を描いた作品である点や、退廃的な雰囲気などが共通していると評されています。

映像化・漫画化

映画: 1994年にニール・ジョーダン監督によって映画化されました。ルイ役をブラッド・ピット、レスタト役をトム・クルーズが演じました。
漫画: 篠原烏童によって漫画化され、アニメージュコミックススペシャル（徳間書店）から出版されました。後にソノラマコミック文庫（朝日ソノラマ）から『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』と改題されて再版されています。

『夜明けのヴァンパイア』は、単なるホラー小説としてだけでなく、愛、憎しみ、孤独、そして人間の存在意義といった普遍的なテーマを描いた作品として、今もなお多くの読者を魅了し続けています。

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