夢のまにまに

『夢のまにまに』

2008年秋に日本で公開された映画『夢のまにまに』は、特異な経歴を持つ一人の映画人によって生み出された作品です。その映画人とは、長年にわたり日本映画界の美術を支え続けてきた木村威夫氏です。彼はこの作品において、90歳という驚くべき高齢で初めて長編映画の監督としてメガホンを取りました。この監督デビューは、当時90歳という高齢での長編映画初監督として世界最高齢の記録となり、ギネス世界記録にも認定されるという、映画史においても極めて稀有な出来事として注目を集めました。

概要

本作は、木村威夫氏自身が執筆した著作『87×26の瘤広場』を原作としています。自身の内面世界や独特の感性が色濃く反映されたであろう物語を、美術監督としての視点と長年培ってきた映像表現の知識を総動員して映像化した意欲作と言えます。公開当時、その話題性から多くのメディアに取り上げられ、木村氏の飽くなき創造力と映画への情熱を示す象徴的な作品となりました。

監督：木村威夫

監督の木村威夫氏は、日本の映画界において美術監督として多大な功績を残してきました。数々の名作、話題作で美術を手がけ、その独特かつ緻密な世界観構築力は高く評価されていました。長年にわたる美術監督としてのキャリアで培われた空間構成や色彩感覚、視覚的な演出力は、『夢のまにまに』においても遺憾なく発揮されていると推測されます。90歳という年齢で新たな分野である監督業に挑戦するというその行動自体が、多くの人々に感動と刺激を与えました。

製作背景とスタッフ

本作は、木村威夫氏の個人的な創造性が強く反映されたプロジェクトでありながら、複数の製作会社と多くのスタッフによって支えられました。

製作: パル企画、トルネード・フィルム、ポニーキャニオン
配給: パル企画

脚本は、監督である木村威夫氏自身に加え、山田英樹氏、我妻正義氏が共同で手掛けました。監督の思想や原作の世界観をどのように映像化するか、脚本の段階で綿密な作業が行われたことでしょう。音楽は川端潤氏が担当し、映画の雰囲気を音楽面から支えています。製作者としては、鈴木ワタル氏、大橋孝史氏、尾越浩文氏が名を連ねています。

作品の意義

『夢のまにまに』は単なる一本の映画というだけでなく、一人の映画人が生涯を通じて培ってきた芸術家としての魂を、新たな形で表現しようとした挑戦の記録でもあります。90歳で長編映画を監督するという前例のない偉業は、年齢に関わらず創造活動は可能であるというメッセージを強く発信しました。美術監督というキャリアを経て、自身の物語を自ら映像化するというプロセスは、木村威夫氏の芸術家としての円熟とその探求心の深さを示しています。この作品は、映画史におけるユニークな一章として、また、人間の創造力と生命力の証として、後世に語り継がれるべき作品と言えるでしょう。

外部リンク

夢のまにまに - allcinema
夢のまにまに - KINENOTE

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