大きな朝に

青森県青森市が現在の形になって誕生した2005年（平成17年）に、新たな市民歌として制定されたのが「大きな朝に」です。この歌は、作詞を篠﨑淳之介氏、作曲を川崎祥悦氏が担当しました。青森市では、これ以前に制定されていた「青森市民歌」（1933年版および1957年版）が存在しており、「大きな朝に」は歴史的に見て、これら旧市民歌に続く事実上の3代目の市民歌と位置づけられています。

この歌が誕生する背景には、2005年4月1日に行われた青森市と南津軽郡浪岡町の新設合併がありました。新設合併の場合、たとえ存続する自治体の名称を引き継いだとしても、法律上は新しい自治体として扱われます。そのため、合併に参加する旧自治体が定めていた条例や規約、シンボルなどは、特に継承に関する定めがない限り、合併と同時に効力を失うのが一般的です。旧青森市が制定していた1957年版の「青森市民歌」も、この合併によって原則として失効する状況にありました。

しかし、青森市と浪岡町の法定合併協議会では、市民歌の扱いについて詳細な検討が行われました。協議会では、従来の市民歌を引き継ぐのではなく、改めて新しい市民歌を制定することが正式に決定されました。具体的には、「市民歌は、新たに定めるものとし、その手法等については両市町の学識経験者等による検討委員会を設置して具体的に検討する」との取り決めがなされました。これは、合併後の混乱の中で新しいシンボル制定が後回しにされたり、計画倒れに終わったりすることも珍しくなかった「平成の大合併」期の自治体の中では、比較的迅速かつ着実な対応と言えます。

合併協議会での決定を受け、青森市では合併成立後まもなく、「シンボル検討委員会」が設置され、直ちに新しい市民歌の制定作業が開始されました。新しい市民歌の歌詞と曲の制作は、一般からの懸賞募集ではなく、専門家への依頼という形が取られました。作詞は、黒石市出身の著名な劇作家であり、青森県褒賞も受賞している篠﨑淳之介氏に依頼されました。一方、作曲は、青森市出身で多くの合唱作品を手がけている作曲家の川崎祥悦氏が担当しました。このように、青森県や青森市にゆかりのある実力派の専門家によって制作が進められた結果、合併から約9ヶ月後の2005年12月26日には、「大きな朝に」が青森市の市民歌として正式に告示・制定されました。

現在、青森市によると、この市民歌「大きな朝に」は、市の成人式をはじめとする様々な公式行事やイベント、市内の小中学校での合唱曲として、また市民による合唱サークルなど、幅広い場面で歌われています。新しい青森市のシンボルとして、市民の間で徐々に浸透し、親しまれています。

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