大ドイツ主義

大ドイツ主義に関する概要

大ドイツ主義（だいドイツしゅぎ）は、19世紀中葉におけるドイツの統一に関する主要な思想の一つであり、その起源は1848年のフランクフルト国民議会にまで遡ります。この会議では、ドイツ統一のための方針が議論され、「大ドイツ主義」と「小ドイツ主義」の2つのアプローチが提起されました。大ドイツ主義はオーストリアに住むドイツ人を統一の対象に含めることを目指し、対照的に小ドイツ主義はオーストリアを除外した形での統一を追求しました。

当初は両者の理念に大きな違いは見られず、ドイツ人やドイツ系住民を基盤にした国家形成の視点で一致していました。しかし、国民議会では大ドイツ主義が幅広い支持を受けていたものの、オーストリア政府はその統一方針に対して強く反対しました。その理由は、オーストリアが多民族国家であり、ドイツ人だけを対象にした統一は非ドイツ系民族との分断を引き起こしかねないためです。この状況はオーストリア帝国の存在に直接的な脅威をもたらすこととなりました。

結局、フランクフルト国民議会では小ドイツ主義が選択され、この方針でドイツ憲法案が進められることとなります。しかし、オーストリアの抵抗が続く中、フランクフルト国民議会はプロイセンの王フリードリヒ＝ヴィルヘルム4世をドイツの皇帝に推挙しましたが、彼はこの提案を拒否しました。その結果、国民議会は解散し、ドイツ統一の動きは停滞を余儀なくされました。

その後、プロイセン王ヴィルヘルム1世の時代にビスマルクが主導した「鉄血政策」により、再びドイツ統一の機運が高まりました。オーストリアとの衝突はプロイセン＝オーストリア戦争へと発展し、短期間でプロイセン側が勝利を収め、北ドイツ連邦が成立しました。しかし、南ドイツの統一には至らず、南部諸国はフランスとの関係を強めることとなります。この緊張状況はプロイセン＝フランス戦争を引き起こし、最終的にはプロイセンの勝利となり、1871年にヴェルサイユ宮殿でドイツ帝国の成立が宣言されました。

興味深いことに、「大ドイツ主義がオーストリア主導で進められる」という見解は誤解であり、オーストリアがこの統一を支持することはなかったことが明らかになっています。むしろ、オーストリアにとってドイツの統一は不利益であり、彼らは大・小どちらの主義に対しても反対の立場を取っていたというのが実情です。

その後の動向

ドイツ帝国成立後、オーストリアはハンガリー人との妥協によりオーストリア＝ハンガリー帝国を形成しました。時代が進むにつれ、チェコ人やスラヴ人といった他の民族が力をつけ始め、その結果、大ドイツ主義が再び注目を集めることとなります。特に、第一次世界大戦の敗北によってオーストリア・ハンガリーが解体されると、オーストリアの国民はドイツ民族としてのアイデンティティを再確認しました。しかし、連合国側はこの動きが大ドイツ主義の復活であるとの懸念を抱き、ドイツとオーストリアの統一を阻止しました。

このように、ドイツとオーストリアの統一に向けた動きは、第一次世界大戦の影響や国際的な政治状況によって妨げられ、最終的にはナチス・ドイツの台頭という形で新たな歴史の曲がり角を迎えることとなります。特にヒトラーはオーストリア人として、母国への帰属を強く意識しながらも、ドイツ民族としてのアイデンティティを強化していきました。

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