大ヒマラヤ国立公園

大ヒマラヤ国立公園の概要

大ヒマラヤ国立公園（Great Himalayan National Park、GHNP）は、インドのヒマーチャル・プラデーシュ州クッルー県に位置する国立公園で、標高6000メートルから2000メートル以下の多様な地形を有しています。この公園は、南北に延びるクッルー渓谷の東側にあり、高山帯や雪解け水の流れる渓谷、さらには豊かな森林に囲まれています。公園の面積は905 km²の核心部と266 km²のバッファーゾーンを合わせ、合計で1,171 km²となります。1984年に設立され、2014年にはユネスコの世界遺産に登録されました。

生物学的位置づけ

大ヒマラヤ国立公園は、生物多様性の観点から非常に重要な地域であり、ユーラシア大陸に広がる旧北区と南アジアの東洋区の境界に位置しています。このため、公園内にはインド大陸に生息する熱帯生物と中央アジアの温帯生物がモザイク状に共存しています。また、標高の差により、高山の草原や清流が流れる渓谷、そして2000メートル以下の森といった25種以上の異なる森林が見られます。標高の違いは生態系の多様性に寄与し、絶滅危惧種の生物も多く含まれています。例えば、ジャコウジカなどの哺乳類やハイイロジュケイなどの鳥類が生息し、珍しい薬草も確認されています。

公園の歴史

大ヒマラヤ国立公園の設立の背景は、1980年代にさかのぼります。1983年から、クッルー県のBanjarエリアで、インダス川水系の3つの渓谷に関する調査が行われました。1984年には、ヒマーチャル・プラデーシュ州が公園の核心部とバッファーゾーンを正式に発表。1987年には、公園の運営計画も策定されました。その後、1988年に現地住民との協議が行われ、1999年に正式にインドで最も新しい国立公園として認定されました。そして、2014年にはユネスコの世界遺産に登録されるまでになりました。

生物多様性

この公園には、31種の哺乳類、209種の鳥類、12種の爬虫類、9種の両生類、125種の昆虫が生息しており、多様な生態系が保たれています。また、維管束植物は805種、地衣類は192種、苔類は12種、さらに蘚類は25種が確認されています。大ヒマラヤ国立公園内では、インドの法律により狩猟が禁止されており、その結果として生物多様性が保護されています。

世界遺産としての登録

大ヒマラヤ国立公園は、2013年に第37回世界遺産委員会で初めて審議され、その際の推薦名は「Great Himalayan National Park」でした。しかし、自然美においては他のヒマラヤ山脈の世界遺産に比べて顕著な価値が見受けられなかったため、登録は見送られました。一方で、生物多様性に関しては意義深い価値が認められ、IUCNからの勧告に基づいて「大ヒマラヤ国立公園保護地域」としての推薦が行われました。2014年には、世界遺産として正式に登録され、さらなる保護と価値の向上が期待されています。登録名には「Great Himalayan National Park Conservation Area」という英語名があり、参考文献に基づく日本語名には「大ヒマラヤ国立公園」や「グレート・ヒマラヤ国立公園保護地域」といった表記が存在します。

結論

大ヒマラヤ国立公園は、その多様な生態系と美しい自然環境により、訪れる人々に深い感動を与える場所です。世界遺産としての登録により、その重要性がより一層認識され、保護活動が進展することが期待されています。自然と生物多様性の宝庫であるこの公園は、未来への貴重な資源であり、保護の重要性を再確認させる世界的な名所です。

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