大久保忠保

大久保 忠保の生涯と藩政改革

大久保忠保（おおくぼ ただやす）は、江戸時代後期に下野烏山藩で藩主を務めた重要な歴史的人物です。第6代藩主として、彼は危機的な藩財政を受け継ぎ、数々の改革を実施しました。この時代、烏山藩は深刻な財政難に見舞われており、忠保はその改善に奔走しました。

家族と家督相続

忠保は、第5代藩主大久保忠成の長男として誕生し、母は第4代藩主大久保忠喜の娘です。文政10年（1827年）、父の隠居に伴って藩主の地位を引き継ぎました。忠成の隠居は高齢によるもので、大坂加番としての役割が担えないことが一因でした。この大坂加番は、幕府からの財源獲得の重要な手段であり、藩財政にとって欠かせないものでした。

財政状況の厳しさ

忠保が藩主になった当初の烏山藩の税収は、享保11年（1726年）時点の半分となるほど落ち込んでいました。藩の財政は、借金に大きく依存しており、収支のバランスは無視される状態にありました。さらに天保8年（1837年）には、累積債務が2万7645両に達し、藩士への給与の支払いも困難な状況に陥っていました。こうした中で、忠保は文政12年に財政緊縮策を布告し、家族に応じた扶持を支給する政策を実施しましたが、状況は改善されませんでした。

大飢饉と打ちこわし

天保の大飢饉が始まると、藩内では飢えに飢える町民たちが穀物商や酒屋に対する打ちこわしを引き起こしました。この事態を受けて、藩は厳しい対策を講じ、酒造停止令を出しました。また、打ちこわしの中心人物への処罰も行われました。しかし、この経験を踏まえ新田開発による国元復興を目指す政策が採用されました。

菅谷八郎右衛門と二宮尊徳の起用

忠保は経済再建のため、家老菅谷八郎右衛門を招き、尊徳を財政再建に起用しました。尊徳の報徳仕法は、財政再建に効果をもたらしました。天保7年には、窮民への救済策が施行され、潤沢な米が地域に送られました。また、窮民のための施粥も行われ、多くの人々が支援を受けました。

仕法の実施と中断

天保8年からは、藩全体での本格的な仕法が始まり、農民たちからの支持を得ました。しかし、内面的な対立や資金難から、仕法は徐々に困難に直面していきました。特に、尊徳が藩内での仕法を進める中で、融資金の返済への圧力が高まり、様々な問題が浮上しました。

再開とその後

天保13年（1842年）には、忠保による藩政改革が期待され、仕法が再開されますが、その後も満足な結果を出すことができず、次第に実施されることは難しくなっていきました。忠保は、1848年に58歳でこの世を去り、藩政の未来は新たな指導者たちの手に委ねられました。

まとめ

大久保忠保は、困難な時代背景の中で財政再建に取り組んだ藩主として、烏山藩の歴史に名を刻む存在です。彼の施策や決断は、藩の復興に寄与する一方で、内部対立や財政難によってその実現には多くの困難が伴いました。忠保の生涯は、藩政改革の試行錯誤と成功・失敗の物語で満ちています。

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