大久保直弥

大久保直弥：不屈の精神で道を切り開いたラグビー指導者

大久保直弥（おおくぼなおや）は、1975年 9月27日生まれの元ラグビー日本代表選手であり、現在はラグビー指導者として活躍しています。2023年8月にはU20日本代表のヘッドコーチに就任し、若手選手の育成に力を注いでいます。

ラグビーとの出会いと成長

神奈川県出身の大久保は、中学校時代は野球部に所属し、元プロ野球選手の井端弘和とはチームメイトでした。高校時代はバレーボール部に所属し、インターハイや国体にも出場するほどの選手でしたが、大学進学を機に新たなスポーツへの挑戦を決意します。

法政大学に進学後、当初はアメリカンフットボールに興味を持つも、バレーボール部の監督の勧めによりラグビーを始めることになりました。ラグビーを始めた当初はルールもポジションも理解しておらず、練習着にバレーボールのユニフォームを着ていくほどでした。しかし、持ち前の協調性と責任感で徐々に頭角を現し、2年目には試合に出場するまでになりました。運動神経は決して万能ではありませんでしたが、不器用ながらもひたむきな努力を続け、その姿勢は多くの人を魅了しました。

サントリーでの活躍

大学卒業後、サントリーに入社。当時のサントリーは強豪チームでありながらも、継続して勝利を掴むことが難しい状況でした。1999年度、全国社会人大会でベスト8に残れなかったことを機に、チームは世代交代を行い、3年目にして大久保がキャプテンに選ばれました。キャプテンとしてチームを牽引し、2000年度には日本選手権で神戸製鋼と引き分け両チーム優勝、2001年度には全国社会人大会と日本選手権で優勝を果たしました。2001年にはサントリー単独チームでウェールズ代表を破るという歴史的な快挙を成し遂げています。2003年には、ワールドカップに集中するためプロに転向し、キャプテンの座を先輩の早野貴大に引き継ぎました。

日本代表としての挑戦

日本代表は遠い存在でしたが、平尾誠二が監督に就任したことで日本代表が変わっていくという期待感がありました。社会人2年目の1999年には日本代表に選出され、トンガ戦で初キャップを獲得。1999年のワールドカップに出場しました。外国人選手が主体となってチームを引っ張る中、日本人選手も切磋琢磨し、成長を実感していました。

2003年のワールドカップでは、箕内拓郎主将、大久保と大畑大介副将という、1975年生まれのトリオがチームを牽引しました。初戦のスコットランド戦では善戦したものの敗れましたが、その勇敢な戦いぶりは「ブレイブ・ブロッサムズ（勇敢な桜の戦士たち）」と呼ばれ、多くの人々に感動を与えました。

最終戦の前日ミーティングで大久保は、「明日は、未来につながる戦いをしよう。明日は、日本の人達がみんな注目して観てるよ。日本の子供達や若い選手達が感動するような戦いをしようぜ。」と熱い言葉でチームを鼓舞しました。2004年にはニュージーランドのサウスランド州選抜入りを果たし、1シーズンプレーした後、サントリーに復帰しました。

指導者としてのキャリア

引退後は、その経験と知識を生かし、指導者としてのキャリアをスタートさせました。2010年シーズンからはサントリーのFWコーチに就任し、2012年には監督に昇格。エディー・ジョーンズが日本代表ヘッドコーチに転出したことを受け、監督として日本選手権3連覇、トップリーグ2連覇を達成しました。

その後、NTTコミュニケーションズシャイニングアークスのFWコーチ、スーパーラグビー・サンウルブズのコーチングスタッフを経て、2020年にはサンウルブズのヘッドコーチに就任しました。これは日本人初の快挙でしたが、新型コロナウイルスの影響により、スーパーラグビー2020は途中で打ち切りとなってしまいました。

2021年からはヤマハ発動機ジュビロ（現・静岡ブルーレヴズ）のヘッドコーチ、アシスタントコーチを歴任し、2023年5月に退団しました。そして、2023年8月にはU20日本代表のヘッドコーチに就任し、次世代の育成に力を注いでいます。

人柄と影響

大久保のプレーは決して器用とは言えませんが、自分が出来ることに一切妥協せず、ハードタックルを反復し、逃げない勇気と献身性がありました。ラグビーを始めたのが大学入学後という異例の経歴にもかかわらず、日本代表まで上り詰めたことは、ラグビーのプロ化が進む現代では極めて稀なケースです。

読書をする中で『人間万事塞翁が馬』という言葉を知り、自身の人生と重ねて、このマインドセットがラグビー選手にとって重要だと感じたそうです。

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