大仏廻国

映画『大仏廻国・中京編』の概要

『大仏廻国・中京編』（だいぶつかいこくちゅうきょうへん）は、日本の映画史において特異な位置を占める作品であり、1934年に枝正義郎監督によって制作されました。この作品は、名古屋市を舞台に、聚楽園大仏が日本各地を巡るという斬新なストーリーが展開され、特に独自のトリック撮影技術が用いられていることで知られています。

制作の背景

監督の枝正義郎は、その作品を通じて新しい映画技術を模索し、東亜キネマから独立して自身の映画製作所を設立しました。作品制作にあたっては、大仏の動きを生き生きと表現するために、大規模なトリック撮影技術を駆使しました。この技術により、実景とミニチュアモデルを巧みに融合させ、観客に違和感のない形で映像が提示されました。特に、「着ぐるみとミニチュアを使う」という手法は、日本映画界において新たな試みとして高く評価されています。

評価と反響

映画は当時の評論家たちから賛否が分かれましたが、一方で「大胆な試み」として注目を集め、多くの観客に支持されました。名古屋での上映時には、映画館が満席になるほどの盛況を呈し、観客に強い印象を残しました。しかし、現存するフィルムは戦災で焼失してしまい、現在ではその映像を完全に見ることはできませんが、戦後には断片的なフィルムが存在していたとの情報もあります。

ストーリーの魅力

作品の内容は、聚楽園大仏が衆生を救うために名古屋を巡るというもので、観光名所や歴史的建造物を訪れながら物語が進行します。大仏は、犬山城に一泊し、真清田神社を参拝した後に、名古屋の様々なスポットを巡ります。この過程で、地獄や極楽を彷徨い、最後には東京へ向かうという壮大な旅を描きます。このストーリーは、宗教的なメッセージが込められていると同時に、娯楽映画としての要素も備えており、多くの観客を惹きつけました。

リメイク版の登場

2018年には、横川寛人監督によるリメイク版『大仏廻国 The Great Buddha Arrival』が公開され、当初の映画の魅力と新たな特撮技術が融合した作品に仕上がりました。このリメイク版では、原作の大仏キャラクターが現代の視点で再解釈されており、クラウドファンディングで調達された資金を元に制作が進められました。特撮分野で影響を受けた俳優たちが多く参加し、新しいファン層を開拓しました。

まとめ

『大仏廻国・中京編』は、日本映画の技術の進歩と歴史的な意義を持つ作品であり、今なお多くの人に語り継がれる存在です。リメイク版の成功もあり、今後もその影響は続いていくことでしょう。この映画が抱えるメッセージや技術の革新性は、映画ファンだけでなく広く文化を愛する人々にとっても興味深いものとなっています。

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