大倉三郎

大倉三郎：京都の建築界を彩った巨匠

大倉三郎 (1900年-1983年) は、20世紀の日本建築史において重要な役割を果たした建築家です。京都を主な活動拠点とし、数多くの公共建築や教育施設を手掛けただけでなく、教育者としても後進の育成に尽力しました。その生涯と建築的業績を詳細に見ていきましょう。

輝かしい経歴：教育者としての顔も持つ建築家

1900年、京都市に生まれた大倉は、旧制同志社中学、旧制五高を経て、1923年に京都帝国大学工学部建築学科を卒業します。卒業後は宗建築事務所に入所し、若くして才能を発揮しました。その後、京都帝国大学営繕勤務を経て、1929年には自身の設計による京都大学花山天文台が竣工するなど、建築家としての地位を確立していきます。

1940年には台湾総督府技師営繕課長として台湾へ赴任。戦後、台湾行政長官公署に留用されたのち国立台湾大学工学部土木学科教授に就任し、教育者としての道を歩み始めます。1948年に帰国後も大阪工業大学、京都工芸繊維大学教授を歴任し、1955年には工学博士の学位を取得しました。

さらに、1960年には京都府建築士会会長に就任。建築界において指導的な役割を担い、1962年には京都工芸繊維大学学長に就任しました。1967年には西日本工業大学学長に就任し、教育者としてのキャリアを積み重ね、1977年に同大学を退職するまで、後進の育成に尽力しました。

1957年には日本建築学会賞を受賞するなど、その研究活動も高く評価されました。受賞対象は「ゴットフリート・ゼムベーの建築論的研究」であり、建築史研究への貢献も示しています。1983年に逝去するまで、建築家、教育者として多大な貢献を残しました。

代表作：多様な建築様式と時代を反映

大倉三郎の建築作品は、時代の変化や多様な建築様式を反映し、多岐に渡ります。主な作品としては、以下のものがあげられます。

京都大学花山天文台 (1929年): 現存する彼の代表作の一つであり、近代的な天文台の機能性を備えつつ、周囲の景観にも溶け込むデザインが特徴です。
萬年社京都支社 (1925年): 残念ながら現在は解体されて現存しませんが、当時の建築技術の高さを示す重要な作品でした。
旧伊藤千太郎邸 (1926年): 大阪市に所在したこの建物も解体されていますが、大倉の初期の代表作の一つとして知られています。
ヴォヤージュドゥルミエール 京都七条迎賓館 (1927年): 旧鴻池銀行七条支店として建設された建物は、現在も残っており、歴史的建造物として価値が高いです。
その他: 生駒時計店、熊本YMCA花陵会館、京都大学農学部演習林事務室、京都大学法学部経済学部本館、龍谷大学図書館、臺北州立臺北第三高等女學校、同志社大学明徳館など、多様な建築物を手掛けています。

これらの作品は、大倉三郎の建築思想と技術力の高さを示すだけでなく、日本の近代建築史において重要な位置を占めています。

建築界への貢献とその後

大倉三郎は、建築家として多くの優れた作品を残しただけでなく、京都府建築士会会長や大学学長などの要職を歴任し、建築界の発展に大きく貢献しました。彼の功績は、現在もなお建築界に影響を与え続けており、後世の建築家たちに多大な刺激を与え続けています。彼の設計した建物の中には、現在も残されているものがあり、その建築美や機能性は人々を魅了し続けています。彼の生涯と建築作品は、日本の近代建築史を語る上で欠かせない存在です。

参考文献

HIROBA表紙シリーズ原画展 図録（大阪府建築士会・近畿建築士会協議会）
新版日本近代建築総覧（日本建築学会）
関西の近代建築（石田潤一郎著）
ひろば（近畿建築士会協議会）1983年6月号
あすとろん6号 https://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/hosizora/astron/astron6/astron6_P1-7.pdf

もう一度検索