大倉流

大倉流（おおくらりゅう）

大倉流は、能楽における囃子方の流派で、主に大鼓方と小鼓方の二つのスタイルを持つことが特徴です。この流派の背後には、長い歴史と深い文化があり、能楽ファンには耳にしたことがあるかもしれない名流の一つです。

起源と歴史

大倉流の起源は、猿楽の金春座の支流である「大蔵座」に遡ることができます。この大蔵座は、時が経つにつれシテ方（演技を担当する役者）と囃子方（音楽を担当する役者）に分かれ、最終的には金春流と大蔵流としてそれぞれ独自の道を歩むことになりました。特にシテ方は現存しないものの、狂言の大藏流に名をとどめています。

大蔵流と金春流は、単に流派としての関係のみならず、血縁関係があることも知られています。金春家は、自らの系譜を飛鳥時代の秦河勝に繋げ、中興の祖は平安時代の秦氏安としています。また、金春家の家風は、竹田姓が受け継がれたことでも知られています。血縁関係の強さから、金春流と大蔵流は芸術的にも互いに影響を与え合ってきました。

シテ方と囃子方の分離

大蔵という名前が文献に初めて登場するのは、『至徳三年記』の記録であり、ここでは大蔵八郎が金剛流と共演している様子が描かれています。この出来事は、金春流が成長を続けていた時期に起こり、大蔵八郎が金春太夫の代わりを務めたことが示唆されています。おそらくこれは、シテ方と囃子方の分離の前兆であったと言えるでしょう。

その後、歴代の大蔵大夫たちは文献に度々登場し、それぞれが自身の流儀を築いていきました。戦国時代には大蔵道入が大蔵大夫となり、その子孫たちがそれぞれの役割を果たしていきます。しかし、甲斐の地では大蔵流が衰退し、金春流の方が影響力を増しました。結局のところ、甲斐の大蔵家は長篠の戦いでの戦死者を出し、血筋が断たれてしまったのです。

小鼓方と大鼓方の概要

大倉流の小鼓方は、金春流の中で独自のスタイルを築いています。その家元は大蔵権右衛門道意であり、流派の基礎を作ったのは二世長右衛門宣安です。小鼓方は、特徴的なやわらかな音色を持ち、調子のかけ方にも独自性があります。現代においても、数名の名人たちがこの流派を引き継いでいます。

一方、大鼓方の大倉流も金春流において重要な役割を果たしています。金春禅竹の子孫である大蔵道加が流派を分け、その後、数世代にわたり名手を輩出しました。大鼓方も、江戸時代中期以降は奈良に在住し、尾張藩の扶持を受けました。

結論

大倉流は、能楽の歴史において不可欠な存在です。シテ方と囃子方の分離を経て独自の道を歩み、小鼓方と大鼓方という二つのスタイルで様々な文化的なエッセンスを提供してきました。これからもこの流派が持つ美しさや技術が多くの人々に受け継がれていくことを願っています。

もう一度検索