金春流

金春流（こんぱるりゅう）

金春流は、日本の伝統演劇である能楽の流派の一つです。流派の名前は「金春」に由来し、これまでには「今春」や「今晴」といった表記も見られました。金春流は、古くから存在する円満井座を前身とし、特にシテ方と太鼓方に分かれていますが、明治時代に大鼓方が廃止され、現在はこの二つの流れが残っています。

シテ方金春流の歴史

シテ方金春流は、室町時代から続くと言われ、奈良春日大社や興福寺に奉仕していた円満井座・金春座・竹田座から派生しています。流派の初代は伝説的な存在とされる聖徳太子に仕えた秦河勝ですが、記録に残る最古の人物は室町時代の五十三世宗家、毘沙王権守です。金春権守はこの流儀の基礎を築き、流派中興の祖と称される金春禅竹は世阿弥の孫でもあります。

金春禅竹は、優れた能作や多くの伝書を残し、能楽の発展に寄与しました。彼はまた、名曲「杜若」や「野宮」を生み出し、世阿弥から受け継いだ芸術的な資質を輝かせました。金春流は江戸時代には観世座に次ぐ地位を占め、多くの分家が広がりました。名古屋や福岡、鹿児島などの地域でも活発に活動しています。

円満井座創座の伝承

金春流の流派が誕生した背景には、聖徳太子の寵臣、秦河勝の存在があります。彼は猿楽の技術を伝え、河勝の子が代々猿楽を継承しました。秦氏安は、村上天皇の時代に「翁」を演じた名手として知られ、その流れは金春流に引き継がれました。

近世期からの発展

江戸幕府の時代、金春流は観世流に次ぐ存在として重用されましたが、豊臣家との親密さが逆に流派の停滞を招く結果ともなりました。それでも金春流は、奈良との関係を重視し、演能を続けることで地域の文化に貢献しました。特に金春札が発行されるなど、経済的な恩恵も受けていましたが、維新後の混乱によってその価値は失われてしまいました。

維新後の危機と再興

明治維新後、金春流は少数のメンバーで細々と続けられていましたが、桜間伴馬の活躍が特に注目されました。彼は金春流の未来を守るため、一時的に東京へ進出し、流派を存続させるための努力を重ねました。桜間弓川や金春信高などもその後、流派の改革に尽力しました。

現在の状況

今日、金春流は東京や奈良、名古屋などを中心に活動しています。能楽協会には100名以上の役者が登録され、古風な芸風を保持しながら、伝統を受け継じています。シテ方は現在、金春憲和が八十一世宗家として流派を牽引しています。金春流は、古式ゆかしい演技や豊かな伝承を今に伝える重要な存在です。

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