大分県温泉熱利用農業研究所

大分県温泉熱利用農業研究所：温泉の恵みと花き研究の軌跡

大分県別府市鉄輪地区は、古くから豊富な温泉資源を有する地域として知られています。その恵みを活かし、農業の発展に貢献しようと設立されたのが、大分県温泉熱利用農業研究所です。1952年4月、野菜や花きの栽培に温泉熱の利用を研究することを目的として、その歴史は幕を開けました。

研究所設立当初は、地元で有名な十万地獄の熱源を利用して研究を進めていましたが、より安定した研究環境を確保するため、1956年には研究所内に独自の噴気井を掘削。これにより、温泉熱の利用に関する研究は、より一層推進されることとなりました。

設立当初は野菜の研究も行っており、温泉熱を用いた栽培技術の開発に力を入れていました。しかし、1966年4月には、野菜に関する研究業務は県内の他の機関に移管され、研究所は花き栽培に特化した専門機関へと転換を図ります。この転換は、大分県の農業における花きの重要性が高まってきたこと、そして温泉熱を用いた花きの栽培に大きな可能性を見出したことに基づいています。

その後も、研究体制の強化と研究範囲の拡大を図りながら発展を続け、1983年4月には「大分県温泉熱利用花き園芸試験場」へと名称変更。さらに、1985年4月には花き総合指導センターが併設されるなど、組織体制も強化されました。研究と指導の両面から、県内における花き産業の振興に大きく貢献していきます。

1992年4月には、試験場と指導センターが統合され、「大分県温泉熱花き研究指導センター」となり、研究と普及指導の一体化を図りました。これにより、研究成果の現場への迅速な導入が可能となり、県内花き農家の技術向上に大きく寄与しました。

そして、2005年4月、大分県では農林水産業に関する公設試験研究機関の大規模な統合が行われました。この再編によって、大分県温泉熱花き研究指導センターは「大分県農林水産研究センター」傘下の花き研究所（大分県農林水産研究指導センター農業研究部花きグループ）へと移行しました。長い歴史を持つ研究所は新たな体制のもと、その活動を継続しています。

大分県温泉熱利用農業研究所、そしてその後継機関は、温泉という恵まれた自然資源と、研究者たちのたゆまぬ努力によって、大分県の花き産業の発展に大きく貢献してきました。その歴史は、地域資源を活用した持続可能な農業の模範として、今後も長く語り継がれていくでしょう。設立から統合までの経緯をたどることで、資源の有効活用と研究体制の変遷、そして地方農業の変貌を理解することができるでしょう。

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