大原はだか祭り

大原はだか祭は、千葉県いすみ市（旧大原町）で毎年9月23日、24日に開催される伝統的な祭礼です。市内3地区（大原、東海、浪花）の18の神社から、それぞれ1～3基の神輿が参加し、勇壮な祭りを繰り広げます。

概要

祭りの最大の特徴は、1日目の23日に行われる「汐ふみ」です。十数基もの神輿が太平洋の荒波に突進し、もみ合い、神輿を空高く投げる様子は圧巻です。神輿と担ぎ手の熱気が一体となり、見る者を圧倒します。

2日目の24日には、大原小学校の校庭で「大別れ式」が行われます。18基の神輿が2基ずつ並んで校庭に入場し、一番を競うかのように勢いよく走り出します。夕闇が迫る頃、花火を合図に神輿が寄り添いながら別れ唄を歌い、祭りの終わりを惜しみます。大別れ式は23日にも行われます。

祭りの模様は、例年10月頃に千葉テレビ放送で1時間枠で放送されます。

参加神社

大原地区

大原八幡神社
上寄瀬御嶽神社
北寄瀬八坂神社
雑鋪・大舟谷日月神社
大井瀧内神社
貝須賀鹿嶋神社
小佐部熊野神社
渋田賀茂神社
田町・新場廣田神社
小浜八幡神社
山田神社

東海地区

深堀瀧口神社
南日在大山神社
北日在玉前神社
若山熊野神社
新田日月神社
釈迦谷天御中主神社

浪花地区

小沢諏訪神社
岩船八幡神社
小池大宮神社
* 岩和田大宮神社

歴史

大原はだか祭の起源は明らかではありませんが、大原地区に残る最古の文献が江戸時代のものであるため、江戸時代に始まったとする説が有力です。しかし、祭りの起源はさらに古く、平安時代頃まで遡る可能性も指摘されています。

大井瀧内神社には、1864年（文久4年）に奉納された、中魚落郷（現在の大原地区）で10基の神輿が渡御している様子を描いた絵馬が残っています。また、「房総志料続編」には、現在の法楽施行や大漁祈願祭とほぼ同じ行事が行われていたことが記されています。貝須賀鹿嶋神社の古い神輿の屋根裏には「大工貝須賀村貞享3年これを作」という記述があり、大原地区では300年以上前から祭りが開催されていたと考えられます。

小浜八幡神社には、かつて東地区の八幡神社から祭礼に参加していたものの、不都合が多いため1145年に現在の地に分祀されたという伝承が残っています。これが事実であれば、少なくとも900年以上前から大原で祭礼が行われていたことになります。

東海地区では、1808年（文化5年）に釈迦谷天御中主神社の氏子が休み場で不調法をした（神輿を担いで暴れたなど）ことに対するお詫び状が残っており、200年以上前から祭りが開催されていたことがわかります。

浪花地区では、岩船八幡神社と小沢諏訪神社で現在も行われている75座神事で、1275年（建治元年）に奉納されたひじきや野菜などの供え物を記したメモが残っており、室町時代にはすでに祭礼が行われていたと考えられます。

2010年には、落雷事故により初日の参加者34名が重軽傷を負う事故が発生し、2日目の行事が中止となりました。祭りが中止になったのは、史上初の出来事でした。また、2020年と2021年は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止のため、祭りは中止となりました。

行事日程

9月23日（1日目）

各神社で神輿の宮出しが行われます。大原地区の10基の神輿は貝須賀鹿嶋神社に集まり、法楽を執り行います。東海地区は村廻りを行います。

その後、18基の神輿は大原漁港に集まり、市場の周りを勇ましい掛け声とともに走り出します。30分以上走り回った後、神輿を空高く投げて意気を誇示します。そして五穀豊穣大漁祈願祭が執り行われ、市長が五穀豊穣と大漁を祈って海に向かって矢を放つ二矢放流の儀が行われます。

15時頃、神輿は汐ふみの会場である大原海水浴場へ向かいます。台風や低気圧の影響で荒れた海に神輿が挑む様子は、祭りのハイライトとして多くの観光客を魅了します。

その後、神輿は商店街へと繰り出し、夜遅くまで練り歩きます。日付が変わる頃にほとんどの神輿が宮入しますが、祭りはその後も続きます。

9月24日（2日目）

大原地区の神輿は村回りを行います。かつては、村人が網元や陣屋などを訪問し、酒や料理を振る舞ってもらう行事でした。現在でも、網元や商店などに招待されることが多いです。江戸時代には、代官所に神輿を担ぎ入れ、年貢の軽減を求めたこともあったといいます。東海地区と浪花地区は、各神社を訪問したり、接待したりします。

15時半頃、17基の神輿が大原八幡神社に集まります。

大原八幡神社を出た神輿は、商店街を練り歩きながら大別れ式の会場である大原小学校へ向かいます。神輿の先頭では、各神社ののど自慢や子供たちが祭り歌を熱唱します。

大原小学校に入った神輿は、力の限りを尽くして駆け出します。陽が落ちると提灯に明かりが灯り、幻想的な雰囲気に包まれます。そして、1社ずつ神輿を天高く投げて置きます。

貝須賀鹿嶋神社の神輿が上がると、それまで駆け回っていた神輿は静止し、「わけもんども、別れがつらい、会うて別れがなけりゃよい」と哀愁のこもった唄を歌います。花火が上がり、各神社は大原小学校を後にします。

祭りの全日程が終了しても、各神社は交通規制が解除されるまで商店街を練り歩きます。その後、甚句や木遣により宮入となりますが、宮入の遅い神社では朝日が昇る頃まで祭りを続けているようです。

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