大原女

大原女：京都の風物詩

大原女とは、京都市左京区大原の女性たちが、薪を頭上に載せて京の都で販売していた行商のことです。古くは炭を販売していたとされていますが、鎌倉時代以降は京の近郊で炭の産地が山城国小野里に移ったため、大原では薪が主要な商品となり、大原女たちは薪や柴を売るようになりました。

大原女の装束は独特で、島田髷に手ぬぐいを被り、薪を頭上に載せ、鉄漿をつけ、紺の筒袖に白足袋をはき、二本鼻緒の草鞋を履くのが特徴です。明治時代頃までは藍色の手ぬぐいでしたが、それ以降は白色の手ぬぐいへと変化していきました。この装束は、治承・寿永の乱（源平の戦い）で生き延び、大原寂光院に隠棲した平徳子（建礼門院）に仕えた阿波内侍が山仕事をした時の衣装を模したものという伝承があります。

大原女は、中世の職人歌合である『東北院職人尽歌合』や『七十一番職人歌合』にも登場しており、狂言や舞踏の題材としても用いられてきました。江戸時代には長沢芦雪が美人画の題材として描き、近代以降は土田麦僊、横山大観、冨田溪仙、堂本印象、小松均といった日本画家や、洋画家の浅井忠など、多くの芸術家によって作品に描かれてきました。これらの作品は、大原女の風情や姿を後世に伝えています。

昭和時代に入ると、大原女の人数は緩やかに減少していき、1945年以降は急速に減少しました。これは、京都市街に電灯や都市ガスが普及し、薪や柴の需要が減ったことが主な原因です。

現代においては、春の「大原女まつり」や「時代祭」の大原女行列など、観光資源として往時の姿が再現され、多くの人々に知られています。これらのイベントを通して、大原女の伝統や文化が現代に受け継がれ、未来へと伝えられています。大原女は、単なる行商ではなく、京都の歴史や文化を象徴する存在として、人々の記憶に刻まれています。

大原女の歴史と文化を理解することで、京都という都市の変遷や、人々の生活様式の変化をより深く知ることができます。また、大原女の装束や仕事ぶりを通して、日本の伝統や美意識を学ぶこともできます。大原女は、過去と現在を繋ぐ重要な文化的遺産であり、今後もその伝統が大切に守られていくことが望まれます。

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