大地のうた

映画『大地のうた』について

『大地のうた』（だいちのうた）は、1955年に公開されたインドのベンガル語映画で、著名な監督サタジット・レイのデビュー作です。この作品は、ビブティブション・ボンドパッダエによる小説を原作とし、インドのベンガル地方に住む一家の厳しい生活と子どもたちの成長を描いています。

ストーリーの概要

物語は、貧困に苦しむ一家を中心に展開されます。主人公のハリハールは名門出身でヒンドゥー教の僧侶という資格を持ちながら、雇い主からの給料が支払われず、日々の生活に苦しんでいます。家族の一員である妻はストレスが溜まり、娘のドガは周囲の農場から食べ物を盗んででも人助けをする心優しい性格です。

やがて長男オプーが誕生し、彼は家族のさまざまな出来事を通じて成長していきます。しかし、家族の生活は依然として厳しく、ある日ハリハールは葬式のために町に向かいますが、その葬式が中止になり、また出稼ぎとして町に留まることになります。この間にドガが命を落としてしまい、ハリハールはその悲劇に打ちひしがれるのです。やがて彼は家族を連れて都市へ移り住む決意をするところで物語は幕を閉じます。

製作の経緯

サタジット・レイは広告会社に勤めながら、『大地のうた』の製作に取り組みました。原作の小説に出会い、強い感銘を受けた彼は映画化を決意。シナリオを完成させ、数人のプロデューサーに企画を持ちかけましたが、誰も興味を示さなかったため、自己資金での製作を始めます。しかし、予算の不足や出資者の不在から製作は長期間にわたって中断されました。

その後、サタジットは政府からの融資を受けることができ、この資金をもとに撮影を再開しました。政府からはハッピーエンドにするよう指示がありましたが、彼はそれを拒否。完成を目指して全力を尽くしました。

評価と影響

『大地のうた』は、1955年5月にニューヨーク近代美術館（MoMA）で初めて公開された後、8月にはインド国内での劇場公開を果たしました。その後、この作品は国際的に高く評価され、多くの映画祭で受賞しています。特に1956年のカンヌ国際映画祭ではヒューマン・ドキュメント賞が授与されました。

映画は制作に約3年を要しましたが、辛勤の努力と情熱が実を結び、インドだけでなく欧米圏でも高い興行成績を収めました。特に『ザ・タイムズ・オブ・インディア』は、「他のインド映画とは一線を画する」と絶賛し、評価を受けました。一方で、フランスの映画監督フランソワ・トリュフォーは厳しい批評を展開したこともあり、賛否両論ある作品となりました。

サタジット・レイの『大地のうた』は、映画史に名を刻む重要な作品として位置づけられており、その後のインド映画界にも大きな影響を与えました。彼の独自の視点と感受性によって描かれた物語は、今なお多くの人々に感動を与え続けています。

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