大坪稔

大坪 稔

大坪 稔（おおつぼ みのる、1927年（昭和2年）8月4日 - 1995年（平成7年）7月8日）は、日本の著名な民法学者である。専門は財産法分野に置かれ、長年にわたり高等教育機関で教鞭を執り、後進の育成と学術研究に多大な貢献を果たした。特に鹿児島大学名誉教授、そして西日本短期大学学長を務めたことで知られている。

生涯と学歴

1927年8月4日、福岡県八女市において生を受けた。幼少期から青年期を過ごした後、高等教育機関に進学。法政大学法学部法律学科で専門的な法律学を修め、1953年（昭和28年）に卒業した。さらに学問への探求心を深めるため、同学大学院社会科学研究科に進学。私法学を専攻し、高度な専門知識の習得に励んだ。1955年（昭和30年）には同研究科の課程を無事修了した。

職歴

大学院での学びを終えた後、大坪氏は教育・研究者の道へ本格的に踏み出した。1957年（昭和32年）、最初に職を得たのは西日本短期大学であり、ここで専任講師として教壇に立った。その後、1964年（昭和39年）には九州産業大学商学部の助教授として転任。着実に研究者・教育者としての実績を積み重ね、1967年（昭和42年）には同大学の教授へと昇任を果たした。九州産業大学での経験は、その後の教育・研究活動の基盤を築く上で重要な期間となった。

1974年（昭和49年）、さらなる活躍の場を求め、北九州大学法学部へ移籍し、引き続き教授の職を務めた。北九州の地で、その学識を学生に伝え、研究活動を推進した。そして1982年（昭和57年）からは鹿児島大学法文学部へと転任し、以降、その学術人生の重要な時期を鹿児島で過ごすこととなる。鹿児島大学では、単に教育・研究活動を行うだけでなく、大学の運営にも深く関与した。具体的には、大学の最高意思決定機関である評議員を務めたほか、法学研究科長として大学院における教育・研究体制の整備に尽力した。また、大学院委員会委員としても、大学院全体の発展に貢献した。これらの役職を通じて、学内のリーダーシップを発揮し、多くの研究者や学生から尊敬を集めた。

1993年（平成5年）に鹿児島大学を定年退官。長年の功績が認められ、同大学名誉教授の称号が授与された。大学での活動を終えた後も、教育への情熱は衰えることなく、再び西日本短期大学に戻り、同学の学長に就任した。学長としては、これまでの教育者としての経験と大学運営の知識を活かし、短期大学の発展に尽力した。

主な研究分野と業績

大坪稔氏の研究は、民法学の中でも特に財産法分野を中心として展開された。物権、債権、契約など、市民生活や経済活動の基盤となる法領域を探求し、実定法の解釈や適用に関する深い考察を行った。特に判例研究にも注力し、具体的な裁判例を通して法の原理や解釈を明らかにする試みを行った。その研究成果は、数多くの学術論文として発表されたほか、一般向けの法律概説書や専門書としても結実した。これらの著作は、学生や実務家にとって貴重な学習・参考資料となった。

著書

氏が執筆または編纂に携わった主な著作は以下の通りである。

単著

『法律学概説』（酒井書店、1967年刊）
『実定法概説』（酒井書店、1974年刊）
『契約法論（1）』（酒井書店、1978年刊）
『地方公務員のための民事判例研究』（酒井書店、1981年刊）

共著

『民事裁判例の基本原理』（堀田泰司氏、采女博文氏との共著、嵯峨野書院、1994年刊）

共編

『民法と現代社会』（本城武雄氏との共編、嵯峨野書院、1994年刊）

逝去

1995年（平成7年）7月8日、病のため永眠された。享年67歳であった。大坪稔氏は、その生涯を通じて民法学者として、また教育者として、日本の法学教育と研究の発展に大きく貢献した。多くの大学で教鞭を執り、幾多の学生を指導し、その学識と人柄は多くの人々に影響を与えた。その功績は、日本の法学史において長く記憶されるであろう。

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