大塚明彦 (経営者)

大塚明彦（おおつか あきひこ）は、1937年（昭和12年）に徳島県鳴門市で生まれ、2014年（平成26年）に77歳で亡くなった日本の実業家です。大塚製薬の創業者である大塚正士を父に持ち、自身も同社を大きく発展させた人物として知られています。

中央大学工学部を卒業後、大塚製薬に入社し、取締役、常務、副社長を経て、1976年（昭和51年）に社長に就任しました。その後、大塚食品社長、日本抗体研究所会長などを歴任し、大塚グループの経営を牽引しました。また、大鵬薬品工業やアース製薬の会長も兼務するなど、幅広い分野で活躍しました。

大塚明彦の功績として特筆すべきは、数々の革新的な商品の企画・開発です。1969年（昭和44年）に全国発売されたレトルトカレー『ボンカレー』、1980年（昭和55年）の健康飲料『ポカリスエット』、1983年（昭和58年）の栄養食品『カロリーメイト』は、いずれも各ジャンルの草分け的存在であり、現在でも多くの人々に愛されています。これらの商品は、それまでになかった新しいコンセプトや価値を提供し、市場に大きな影響を与えました。

また、医薬品事業においても、点滴用の輸液が中心だった部門を、研究開発力の強化によって収益の柱へと成長させました。その背景には、将来を見据えた明確なビジョンがありました。1970年（昭和45年）当時、ボウリングブームに沸く中で、大塚製薬の取締役会でボウリング場の経営が検討された際、大塚明彦は「ボウリング場は将来製薬会社を支えるに足る事業となるか」と問いかけ、新薬開発のための研究所設立を提言しました。このエピソードからも、彼の先見性と経営者としての卓越した手腕が伺えます。

1998年（平成10年）には、新薬開発に関わる汚職事件で逮捕され、大塚製薬社長を辞任するという苦難も経験しましたが、2000年（平成12年）に取締役に復帰し、2008年（平成20年）には大塚ホールディングスの初代会長に就任しました。2010年（平成22年）には同社を東証一部に上場させ、グループ全体の発展に貢献しました。

晩年は、その功績が認められ、国内外から多くの勲章を受章しています。2007年（平成19年）にはローマ教皇庁より聖シルベストロ教皇騎士団勲章、2014年（平成26年）にはフランス政府よりレジオンドヌール勲章オフィシエを授与されました。また、2015年（平成27年）には秩父宮妃記念結核予防功労賞の事業功労賞（個人）も受賞しています。さらに、2015年（平成27年）には、故郷である鳴門市から名誉市民の称号を贈られました。

2014年11月28日に大塚明彦が亡くなった際には、ポカリスエットスタジアムで行われたJリーグ・徳島ヴォルティス対ガンバ大阪戦で、徳島の選手が喪章を付けてプレーし、その死を悼みました。これは、彼がスポーツ振興にも貢献していたことの証左と言えるでしょう。大塚明彦は、革新的な商品開発と医薬品事業の発展を通じて、大塚グループを一大企業へと成長させただけでなく、人々の健康と生活に貢献した人物として、その名を歴史に刻んでいます。

大塚明彦は、大塚国際美術館の第2代館長も務めました。

関連情報として、大塚製薬会長のビジョンに関する記事も存在します。

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