大学合同考古学シンポジウム

早稲田大学および明治大学の文学部考古学教室が共同で、2000年より毎年開催している学術的な集会です。日本の考古学研究における主要なトピックや最新の調査・研究成果について、両大学の研究者や関係者が一堂に会して発表や討論を行います。この取り組みが始まった当初、早稲田大学の広報誌である早稲田ウィークリーは、スポーツの早明戦になぞらえ、『文化の早明戦』と表現し、注目を集めました。

開催形式と学術的成果

シンポジウムは基本的に毎年開催され、各回で特定の考古学的テーマが設定されます。両大学の教員を中心に基調報告が行われるほか、若手研究者や大学院生なども発表の機会を得て、活発な意見交換が繰り広げられます。このシンポジウムは、大学間の垣根を越えた学術交流の促進、研究成果の共有と深化、そして新たな研究視点の創出に貢献しています。また、シンポジウムで発表された研究成果の一部は、大学合同考古学シンポジウム実行委員会によって編集され、書籍として刊行されており、広く研究者や一般に公開されています。

これまでの主なテーマと内容

これまでに開催されたシンポジウムでは、日本の先史時代から古代にかけて、多様なテーマが取り上げられてきました。主な開催回とその内容は以下の通りです。

第1回（2000年）「ムラからクニへ－2～4世紀の東日本－」
弥生時代後期から古墳時代初頭にかけての東日本における社会変動に焦点を当てました。早稲田大学からは弥生時代の政治権力、すなわち「クニ」の形成過程やその性格に関する基調報告がなされました。一方、明治大学からは、同時期の古墳に見られる地域性とその意味合いについての基調報告が提示され、それぞれの視点から初期国家形成期が論じられました。

第2回（2001年）「縄文社会を探る－縄文後晩期　下総台地の地域社会から－」
縄文時代後晩期における下総台地周辺の地域社会の様相を掘り下げるテーマでした。

第3回（2002年）「埴輪を見分ける」
埴輪の分類や解釈に関する実証的なアプローチが中心となりました。特に、実際に埴輪を模倣して製作する実験を行い、その結果に基づいて模倣製作された埴輪の分類を報告するなど、ユニークな試みが行われ、考古学における実証研究の重要性について議論が集中しました。

第4回（2003年）「縄文と弥生―多様な東アジア世界のなかで」
日本の縄文時代と弥生時代の関係性を、より広い東アジア世界の視点から捉え直そうとするテーマでした。従来の考古学の方法論にまで議論が及び、この回からは他大学の著名な研究者も招いてのパネルディスカッション形式も取り入れられ、議論の幅が広がりました。

第5回（2004年）「古墳から寺院へ-関東の7世紀を考える-」
古墳時代終末期から飛鳥時代にかけての7世紀に関東地方で起きた社会や文化の変革をテーマとしました。この時期の古墳から仏教寺院への変遷に焦点を当て、実証的な観点から新たな史料を紹介しつつ、日本各地における権力構造や社会組織の変革について集中的に議論が交わされました。

これらのテーマからもわかるように、シンポジウムでは各時代の主要な考古学的課題に対し、多角的な視点からのアプローチが試みられています。

成果として刊行された書籍

シンポジウムでの発表や議論を基に、以下の書籍が刊行されています。

『弥生の「ムラ」から古墳の「クニ」へ』（2002年、学生社）
第1回シンポジウム「ムラからクニへ－2～4世紀の東日本－」の成果をまとめたものです。

* 『縄文社会を探る』（2003年、学生社）
第2回シンポジウム「縄文社会を探る－縄文後晩期　下総台地の地域社会から－」に関連する内容が収められています。

これらの出版物によって、シンポジウムでの学術的な営みがより多くの人々に共有され、今後の研究に生かされることが期待されます。大学合同考古学シンポジウムは、早稲田大学と明治大学という日本の考古学研究をリードする二つの機関が連携することで、考古学の発展に貢献し続けています。

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