大島丸 (初代)

大島丸（初代）の概要

大島丸（初代）は、山陽本線の大畠駅と屋代島（周防大島）の小松港を結ぶ国鉄大島航路に就航した客貨船です。後に仁堀航路へ転属し、安芸丸（初代）と改称されました。大島航路には3隻の大島丸が存在しましたが、本船はその初代にあたります。

大島航路と大島丸就航の背景

元々山口県が運営していた大島航路は、1946年（昭和21年）4月に国鉄の前身である運輸省鉄道総局に移管されました。当初は、県営時代から使用されていた焼玉エンジンの木造船である山口丸、第二山口丸が使われていましたが、老朽化のため、旧海軍の魚雷運搬船を改造した客船である五十鈴丸、玉川丸が導入されました。さらに、島内での国鉄バス営業開始に伴い、旧海軍の上陸用舟艇型運貨船を改造した五月丸が就航し、バスやトラックの輸送を担いました。これらの船舶の老朽化に伴い、大島連絡船として初の新造船として建造されたのが大島丸です。

大島丸の革新的な技術

大島丸の計画当時、青函航路や宇高航路では、戦後の混乱期に建造された質の低い連絡船が使用されており、次世代連絡船の大量建造が急務でした。そのような状況下で、国鉄は可変ピッチプロペラに着目しました。当時、可変ピッチプロペラは、負荷変動の激しい底引き漁船や曳船などの特殊な船舶に使用されることが一般的でしたが、国鉄はその操縦性の高さから、次世代連絡船への採用を視野に入れ、試験的に大島丸へ導入しました。これにより、直進性や燃料消費などの検証が行われました。

大島丸の主機関は、定格出力350制動馬力、毎分380回転で、主軸直結の川崎エッシャーウイス式可変ピッチプロペラ（3翼組み立て式、直径1.6m）を搭載していました。操舵室には、主操縦レバーと補助操縦レバーが設置され、離着岸時には船長が直接操作できるようになっていました。

大島丸の就航と航路変更

1961年（昭和36年）6月2日に大阪造船所で竣工した大島丸は、同年6月10日に就航しました。450名の旅客と5トン積みトラック1台を積載でき、自動車を積載しない場合は550名の旅客定員がありました。自動車は上甲板中央部から横積みで搭載し、客室は自動車積載場の前後の上甲板と、その下の階にありました。また、上甲板の後部客室の屋上は日除け付きの展望席となっていました。

しかし、大島丸就航後、大島航路では自動車輸送の需要が急増し、競合する航路が自動車航送を開始したこともあり、自動車1台しか積載できない大島丸では対応が難しくなりました。そのため、国鉄は4m自動車6台を積載できる小型カーフェリー周防丸を建造し、1964年（昭和39年）7月10日に大島航路へ投入しました。大島丸は同年12月9日に仁堀航路へ転属し、翌1965年（昭和40年）6月8日に安芸丸と改名しました。同年7月1日から仁堀航路での自動車航送を開始しました。

安芸丸としての活躍

仁堀航路に転属した安芸丸は、1967年（昭和42年）に船尾客室を撤去し、自動車搭載場を拡張しました。これにより、2トン車を8台積載できるようになりました。しかし、古巣である大島航路では、大畠瀬戸の潮流が激しく、大島大橋の建設に伴い、潮流がさらに複雑化していました。そのため、周防丸では対応が難しくなり、1975年（昭和50年）3月9日に大型カーフェリー瀬戸丸が仁堀航路に就航しました。安芸丸は周防丸の代船として、再び大島航路に戻り、周防丸は引退しました。

晩年とその後

1976年（昭和51年）7月4日、大島大橋の開通により大島連絡船が廃止され、安芸丸は終航しました。その後、1977年（昭和52年）に売却され、笠戸船渠の従業員運搬船として1988年（昭和63年）頃まで使用されました。

その他のエピソード

晩年の大島航路では、安芸丸（初代）と大島丸（3代目）が運航されていました。つまり、大島丸の初代と3代目が同時に運航されていたことになります。
大島丸（3代目）は後に安芸丸（2代目）に改称され、宮島航路へ転属しました。つまり、大島丸の初代と3代目は同じ安芸丸に改称されたことになります。

このように大島丸（初代）は、その革新的な技術と航路変更を経て、様々な役割を果たした船でした。

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