大島正満

大島正満：台湾淡水魚研究の父、多岐にわたる分野で活躍した生物学者

大島正満（おおしま まさみつ、1884年6月21日 - 1965年6月26日）は、日本の生物学者（動物学）であり、理学博士、農学博士の学位を持つ研究者です。特に、シロアリの研究や、台湾での魚類研究で大きな功績を残しました。

生涯と研究

大島正満は、1884年に北海道札幌で生まれました。父親は札幌農学校の第一期生である大島正健です。幼少期に京都へ転居し、同志社中学校を経て、奈良中学校に転入。その後、神奈川県立第一中学校（現在の神奈川県立希望ヶ丘高等学校）に進学しました。第一高等学校を経て、1908年に東京帝国大学理科大学動物学科を卒業。1907年から1924年まで台湾総督府に勤務しました。

台湾勤務時代には、スタンフォード大学に留学し、D.S.ジョーダンの指導のもとで魚類研究に励みました。特にサケ科の淡水魚類の研究に力を注ぎ、「サラマオマス」（現在のタイワンマス）を命名。タイワンマスは、2001年からは台湾の2000元札に印刷されるなど、台湾を代表する魚として知られています。

大島は、台湾で20数種類の淡水魚の新種を命名し、「台湾淡水魚の父」と呼ばれるようになりました。大正末期には内地に引き揚げ、その後は研究と教育に尽力します。1930年には東京府立高等学校教授、1932年には東京文理科大学の講師に就任。東京女子大学講師や東京帝国大学理学部嘱託も務め、三崎臨海実験所の再建にも尽力しました。

研究分野と論文

大島正満の研究分野は多岐にわたり、魚類だけでなく、シロアリや生物学全般に及んでいます。特にサケ科の淡水魚類の研究では、ヤマメとアマゴの分布境界線に関する論文や、両者の間種に関する研究など、詳細な研究成果を発表しました。

主要な論文として、以下のものが挙げられます。

球磨川荒瀬堰堤が鮎の生態に及ぼしたる影響 (1956年)
白蟻の生殖法に就て (1907年)
ヤマメ及びアマゴの分布境界線に就いて (1930年)
九州に於けるヤマメとアマゴの分布 (1957年)
天竜川上流三峰川で採捕されたアマゴとヤマメとの間種 (1959年)

これらの論文は、日本の魚類学、動物学の発展に大きく貢献しました。

著書と教育活動

大島正満は、研究活動だけでなく、多くの著書を執筆し、教育者としても活躍しました。著書には、生物学の入門書から、エッセイ、科学物語まで、幅広い分野に及んでいます。

主な著書は以下の通りです。

生物学通論 (1928年)
冷凍と冷蔵 (1931年)
動物學汎論 上巻 (1932年)
動物學汎論 下巻 (1933年)
動物物語 (1933年)
不定芽 (1934年)
近世生物通論 (1934年)
動物奇談 (1936年)
結婚と優生 (1937年)
魚 (1940年)
随筆集 魚籠 (1941年)
南国の驚異 (1943年)
科学物語 (1944年)
毒蛇解説 (1944年)
少年科学物語
人類進化史 (1949年)
古代動物ものがたり (1949年)
小さな進化者物語 (1949年)
クラーク先生の足跡 (1950年)
後編 動物物語 (1950年)
海の魚・河の魚 (1950年)
続 少年動物物語 (1951年)
動物の世界 (1952年)
応用動物事典 (1961年)

これらの著書は、一般読者にも分かりやすく書かれており、生物学への関心を高めるのに貢献しました。

晩年と業績

1935年に父正健が病に倒れた後、正健が口述したクラーク博士や札幌農学校生らの逸話を書き留め、1937年に『クラーク先生とその弟子たち』として出版。この書籍は、クラーク博士の業績を伝える上で重要な資料となっています。

1948年にはGHQ資源局水産課顧問を務め、1958年には北海道大学で農学博士号を取得しました。大島正満は、研究者、教育者、著述家として、日本の生物学の発展に大きく貢献した人物です。その業績は、今もなお多くの人々に影響を与え続けています。

参考資料

大島正満 『サケ科魚類論集』 淡水魚保護協会、1981年2月。
大島正健（著）、大島正満・大島智夫（補訂） 『クラーク先生とその弟子たち』 教文館、1993年 補訂増補版再刊。
大島正満 『不定芽』 刀江書院、1934年7月。

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