大戦景気 (日本)

大戦景気（大正バブル）

大戦景気、または大正バブルとは、第一次世界大戦が日本の経済にもたらした空前の好況を指します。この時期、日本は連合国の一員として参戦し、本土が戦闘地域に含まれないため、商品輸出が急増しました。景気の高揚は1915年に始まり、1920年の戦後恐慌に至るまで続きました。これにより、戦前の日本経済は大きな転機を迎え、工業生産が急増し、重化学工業の進展が見られました。

大戦景気に至る背景

日露戦争以降、約10年間、日本は「五大国」の一角として徐々に経済成長を遂げていましたが、国際収支は常に赤字であり、大蔵省や日本銀行を悩ませていました。1914年に発足した大隈内閣は、国際収支の改善を目指し、財政を引き締める政策を採ったものの、戦争の勃発が状況を一変させました。

1914年7月、ヨーロッパで第一次世界大戦が勃発し、当初は為替相場の混乱と工業原料の不足によって日本経済も一時的にダメージを受けました。しかし、その後、1915年の後半に至ると、連合国からの軍需品の需要が高まり、日本の製品に対する需要が急増しました。特にアジア市場での競争が緩和され、日本の商品が独占的な立場を確立しました。

経済の特需と産業発展

この好況の中で特に潤ったのが鉱山、造船、商事の各分野でした。大戦景気は、年ごとの増配をもたらし、株式市場も活況を呈しました。企業の利益が急増し、日本の主要企業は短期間で巨額の利益を上げます。結果として、1914年から1918年の間に日本の正貨保有額は約3億4,000万円から約15億9,000万円に増加し、1920年には27.7億円を超える対外債権を有するようになりました。

貿易と生産の急成長

大戦景気は主に輸出の急増によって支えられました。当時の日本は立ち遅れた軽工業から本格的な工業国へと変貌を遂げ、特に生糸製品や綿布などの輸出が急増しました。特にアメリカ市場からの需要が高まり、未開拓であった市場にも進出しました。

また、工業生産が大幅に伸び、国内の工場労働者も増加しました。労働者の数は1914年には85万人であったのが、1919年には147万人にまで達しました。生産活動が活発化する一方で、工業の動力源は蒸気から電力へと転換され、結果として電力に基づく新たな工業が誕生しました。

社会的影響と変化

大戦景気の中で、資本の集積と財閥の形成が進行し、大資本家の影響力が急増しました。銀行の金融資本も集中し、財閥による独占体制が確立されました。特に著名な四大財閥が形成され、それぞれが多角的な事業展開を行いました。このような経済発展に伴い、都市への人口集中や工場の発達も顕著となりました。

一方で、インフレーションによる物価高騰が生活を圧迫し、労働者層は困窮する事態が発生しました。特に賃金が物価上昇に追いつかないため、多くの家庭で生活苦が広がり、「米騒動」と呼ばれる大規模な暴動も引き起こされました。このように、大戦景気は日本社会に根本的な変化をもたらし、政治や社会運動の活発化を促す要因にもなりました。

結論

大戦景気は、日本の経済構造や社会構造に劇的な変化をもたらした重要な時期です。その背景には第一次世界大戦の影響が強く、さまざまな産業が飛躍的に成長しましたが、同時に貧富の格差や社会問題も顕在化しました。これにより、戦後の経済政策や社会運動が活発化する土壌が整えられることとなりました。

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