大日本帝国憲法第12条

大日本帝国憲法第12条の概要

大日本帝国憲法第12条は、天皇が陸海軍の編成及び常備兵数を定める権限を有することを規定した条文です。この条文は、大日本帝国憲法の第1章に位置し、天皇の大権の一部分を形成します。この条文の解釈をめぐっては、特にロンドン海軍軍縮会議の際に「統帥権干犯問題」が発生し、国の運営に大きな影響を与えました。

実際の表記

現代の表現での内容は、次のようになります。「天皇は、陸海軍の編制及び常備兵額を定める。」これにより、天皇の権限が明確にされ、軍に関する重要な決定が天皇自身に委ねられることが示されています。

大権の位置づけ

第12条における大権は、軍の運営に直接関わるものですが、統帥権とは異なります。統帥権は戦闘や軍の指揮に関連し、主に軍内部の教育や紀律の権限を含みます。一方で、本条の大権は政務に密接に関連しており、内閣がその支援を行うべき立場に置かれています。こうした背景の中、本条の「編制」は、外部に対する軍の構成を指し示すものとされています。

外国の例

他国では、軍隊の編成や常備兵数は法律によって規定されることが一般的です。例えばイギリスでは、議会の議決を毎年必要とする形をとっていますが、大日本帝国憲法では、これらは天皇の大権の一部とされ、帝国議会の議決を必要としません。この違いは、天皇の権限の独自性を示すものであり、効率的な軍の運営を可能にしています。

制約と例外

ただし、この大権も完全には自由ではありません。帝国議会の予算議定権によって、間接的な制限を受けることがあります。これは、国家予算が軍の活動に大きな影響を持つため、議会の意向が反映される仕組みです。また、陸海軍に関する命令は、必ず勅令として発出される必要があり、これに反することは許されません。軍令によって定めることは許されず、これは本条が統帥権と異なる性質を持つためです。

内部的編制の位置づけ

なお、軍の内部的な編制や教育については軍令をもって規定することができ、ここには統帥権が及ぶため柔軟な運用が可能です。

参照すべき関連条文

大日本帝国憲法第12条は、同憲法の第11条、第13条、第55条と関連性を持ち、また現行の日本国憲法第9条とも関連があります。これらの条文は、軍に関する日本の法律の基盤を形成する重要な要素です。

参考文献

美濃部達吉による『逐条憲法精義』は、この条文の解釈や歴史的背景を学ぶための良い資料です。

このように、大日本帝国憲法第12条は、陸海軍の編制に関する重要な法律として、政府の運営と歴史に深い影響を与えていることが分かります。

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