大日本帝国憲法第32条

大日本帝国憲法第32条についての解説

大日本帝国憲法第32条は、第2章に位置し、特に臣民の権利と義務についての規定を含んでいます。この条文は、一般市民とは異なり、軍人に対して特別な取り扱いを適用することを示しています。これは、軍隊がその規律を厳格に保つ必要があるためであり、軍人には一般人の自由を制限する特例が多く認められています。

軍人の特別な扱いとその背景

本条文では、「陸海軍の法令又は紀律に抵触しないものに限り、軍人に準用する」という形で、軍人に適用される権利と義務を設けています。様々な法律では、軍人に対する適用が制限されているため、軍隊の規則に対立しないものに限られています。この考えは、プロイセン憲法の影響を受けており、プロイセン憲法39条は「軍の法律及び紀律に抵触しないものに限り適用」とする内容があり、本条文の基となっています。ただし、本条は適用範囲を広げているため、軍人には様々な特例が認められています。

契約に基づく自由の制約

軍人に対しては、一般人のように法律に基づく自由が全面的に保障されているわけではありません。例えば、軍人については、服務に関する義務を一般的には法律で定めるべきところ、勅令を用いることで規定することが許されています。これは、特殊な職業である軍人に対して、特別な規律を適応する必要性から来ているのです。この場合、官吏として従事している軍人には、任官大権によって勅令で服務上の義務を定めることができますが、通常の官吏の場合はその限度が制約を受けることがあります。

一方、卒たる軍人に関しては、強制的に兵役を課せられ、その基づいて服務に関わる義務を法律に従って定める必要がありますが、本条により、卒たる軍人に対しても勅令を介して義務や権利を定めることができるようになっています。このような背景から、陸軍や海軍のサーヴィスに関する法律も勅令を通じて定められています。

規律の維持と自由権の制限

また、軍人には軍の秩序や規律を保持するために必要な範囲内で、憲法上保障された自由権を制限されることが許されている点も特筆されます。これは、軍の内部における命令や委任によるものです。居住の自由や信書の秘密、さらには言論、出版、集会および結社の自由など、通常の法律に基づく自由が制約される可能性があるということです。

本条で述べる「軍人」とは、現役軍人のみならず、予備役や後備役、補充役なども含まれています。これらの軍人も召集に応じて服役する義務がありますが、必ずしも現役軍人と同様の規律に服するわけではありません。実際に軍隊に属する者だけが対象となります。

憲法改正の提案

興味深いことに、占領期において松本烝治らが提案した憲法改正私案では、本条を含むいくつかの条文が削除対象とされていた記録があります。このような議論は、軍人の取り扱いやその権利義務についての社会的な理解と価値が変化する中で、憲法の更新の必要性が浮き彫りになったことを示しています。

まとめ

大日本帝国憲法第32条は、軍隊の特性を考慮し、軍人に特定の規制や義務を課すことを定めています。その中で軍の規律が如何に重要であるか、また、一般市民とは異なる取り扱いが必要であるかという視点を反映しています。この条文の影響や意義は、当時の軍事的背景を理解する上でも重要な位置を占めているのです。

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