大曲輪貝塚

大曲輪貝塚：縄文時代の複合遺跡

大曲輪貝塚（おおぐるわかいづか）は、愛知県名古屋市瑞穂区に位置する縄文時代の貝塚を伴う複合遺跡です。遺跡は、瑞穂陸上競技場に隣接しており、競技場の建設時に発見されたため、大曲輪遺跡（おおぐるわいせき）とも呼ばれています。現在、競技場は2026年アジア競技大会に向けて建て替え工事が行われており、貝塚を含む工事区画内への立ち入りが制限されています。

発見と調査

大曲輪貝塚は1939年（昭和14年）に瑞穂陸上競技場の建設中に発見され、1941年（昭和16年）に国の史跡に指定されました。1980年（昭和55年）には、競技場の改築に伴い旧スタンドを取り壊した際、その下に遺跡が良好な状態で残存していることが確認されました。この発見を受けて、約2200平方メートルの範囲で発掘調査が実施され、周辺地域を含めて縄文時代前期から古墳時代、そして中世に至る複合遺跡であることが判明しました。また、山崎川の対岸で発見された下内田貝塚も、この大曲輪貝塚と同じ集落の一部であると考えられています。

出土品

貝塚は縄文時代前期のものとされ、4ヶ所から石斧や石鏃などの石器類、土器や土製の耳環などが出土しました。特筆すべきは、ほぼ完全な状態の屈葬人骨と複数の人骨片が発見されたことです。さらに、縄文晩期の甕棺墓群や竪穴建物跡（少なくとも1棟は縄文前期のものと確認）も検出されており、この地域における縄文時代の生活様式を知る上で貴重な資料となっています。これらの出土品は、現在名古屋市博物館に収蔵されています。

大曲輪人骨

発掘された人骨の中には、胸の上に犬の骨1頭分を抱いた状態で発見されたものがあり、人と犬が共に埋葬された可能性が指摘されています。また、最も完全な状態で確認された人骨については、競技場スタンド横に発掘時の状態を模したレプリカが展示されていましたが、現在はレプリカが収められていたケースのガラス覆いの上から説明が掲示されるのみとなり、直接見ることができなくなっています。

現在の状況

現在、大曲輪貝塚は瑞穂陸上競技場の建て替え工事のため、見学が困難な状況にあります。しかし、この遺跡は縄文時代の生活を知る上で非常に重要な場所であり、今後の調査や研究の進展が期待されています。

参考文献

名古屋市教育委員会 編『名古屋の史跡と文化財（新訂版）』名古屋市教育委員会、1997年。

関連項目

瑞穂古墳群
縄文時代の遺跡一覧
日本の貝塚一覧

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