大村英昭

大村 英昭

大村 英昭（おおむら えいしょう、1942年10月2日 - 2015年9月21日）は、日本の著名な社会学者であり、教育者、そして宗教者でもありました。特に臨床社会学と宗教社会学を専門とし、現代社会が抱える様々な問題に対して、学術的な分析と深い洞察をもって向き合いました。

大阪市に生まれた大村氏は、学問の道を志し、1965年に京都大学文学部哲学科を卒業後、同大学院に進学。1970年に博士課程の単位を取得して退学し、本格的に研究者のキャリアをスタートさせました。初期には神戸商科大学で助教授を務め、その後、大阪大学人間科学部に移り教授に就任。長年にわたり教鞭を執り、多くの後進を育成しました。2002年に大阪大学を退職し、名誉教授の称号を得ています。

大阪大学退職後も研究・教育活動は衰えることなく、関西学院大学の教授として活躍し、2011年に定年退職。その後も同大学大学院の社会学研究科で国内客員教授として迎えられ、相愛大学では特別任用教授を務めるなど、精力的に活動を続けました。また、筑紫女学園大学の学長に就任し、教育行政においても指導力を発揮しました。

大村氏の専門分野である臨床社会学は、個人の抱える困難や社会的な問題を、社会学的な視点から理解し、その解決に向けた支援や介入を目指す応用的な分野です。また、宗教社会学においては、現代社会における宗教の役割、人々の宗教意識の変容、そして伝統的な宗教が直面する課題などを深く分析しました。非行、死、生きづらさといった、人間や社会の根源的な問題に焦点を当てた研究は、多くの人々に影響を与えました。

学術界での貢献も大きく、関西社会学会会長や日本犯罪社会学会理事などを歴任し、それぞれの分野の発展に尽力しました。

特筆すべきは、大村氏が浄土真宗本願寺派の僧侶でもあり、円龍寺の第16世住職を務めていたことです。社会学者として客観的な視点から社会を分析する一方で、宗教者として人々の内面や精神的な営みに寄り添いました。この二つの立場から、現代社会における宗教、特に仏教の可能性を探求し、その知見は「臨床仏教学」といった新たな分野の提案にもつながりました。

その研究成果は数多くの著作として結実しています。代表的な単著には、『非行の社会学』やその増補版である『非行のリアリティ』があり、非行問題を社会構造との関連で捉え直しました。また、現代人の死生観と宗教の関係を論じた『死ねない時代 いま、なぜ宗教か』、『宗教のこれから 日本仏教がもつ可能性』、『現代社会と宗教』といった著作では、急速に変化する社会における宗教のあり方を考察しています。『日本人の心の習慣 鎮めの文化論』では、日本文化に根差した独特の心の習慣について論じました。そして、自身の専門と宗教者としての経験を結びつけた『臨床仏教学のすすめ』も重要な著作です。

共編著も多岐にわたり、『逸脱の社会学』、『現代人の宗教』、『臨床社会学のすすめ』など、専門分野における共同研究や教育のための書籍を多数刊行しています。これらの著作は、関連分野の研究者や学生だけでなく、一般の読者にも広く読まれました。

2015年9月21日、転移性肺がんのため、72歳でその生涯を閉じました。社会学者、教育者、そして宗教者として、多方面から現代社会の複雑な課題に取り組んだ大村英昭氏の研究と業績は、今なお多くの人々に示唆を与え続けています。

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