大村西崖

大村 西崖（おおむら せいがい）

大村西崖は、明治元年に生まれた日本の美術史家及び美術評論家であり、幼名は塩沢峰吉として知られています。雅号は無記庵です。彼は数多くの美術関連の著書を刊行し、日本の美術界において重要な役割を果たしました。

経歴

西崖は、駿河国富士郡の水戸島村、現在の静岡県富士市において、塩沢茂三郎の次男として出生しました。早くから美術に興味を持ち、庵原郡の大村桂蔵の養子となりました。西崖は、明治25年に大村家に入籍し、専門的に美術を学ぶべく新間雲屏に師事しました。

1893年、東京美術学校の彫刻科を卒業し、第1期生としてその名を知られるようになりました。その後、京都に移り、教員や雑誌の編集者として活動しました。1896年には東京美術学校の助教授に選ばれ、その後一時的に職を離れますが、1898年に復職し、1905年には教授に昇進しました。講義内容は、彫刻や美術、美学、考古学、さらには東洋史や東洋美術史にまで及び、多岐にわたりました。

1906年、西崖は田島志一と共に審美書院を設立し、東洋美術に関する書籍を出版しました。同時に「無記庵」という号で『東京日日新聞』にて美術批評を寄稿し、自らの見解を広く発信しました。帝室博物館でも上級彫刻科主任、古社寺の保存計画調査員としても活躍し、美術に対する貢献を続けました。さらに、彼は『密教発達志』全5巻で帝国学士院賞を受賞し、その業績が評価されました。

西崖は1927年、東京帝国大学附属病院の入院先で死去しました。生涯にわたる彼の業績は、美術の発展に寄与するとともに、日本の美術評論の基礎を築いたと言えます。

著書・編書

大村西崖は以下のような著書や編書を残しています。

• - 『審美綱領』 森林太郎共編（春陽堂、1899年）
• - 『東洋美術小史』（審美書院、1906年）
• - 『阿育王事蹟』 森鷗外共著（春陽堂、1909年）
• - 『支那絵画小史』（審美書院、1910年）
• - 『日本絵画小史』（審美書院、1910年）
• - 『希臘羅馬諸神伝』 全4巻（審美書院、1912年）
• - 『三本両部曼荼羅集』 編（仏書刊行会、1913年）
• - 『支那美術史彫塑篇』（仏書刊行会、1915年）
• - 『密教発達志』 全5巻（仏書刊行会、1918年）
• - 『獲古図録』 上下巻（だるまや書店、1923年）
• - 『東洋美術史』（図本叢刊会、1925年）
• - 『近世風俗画史』 編（宝雲舎、1943年）
• - 『広日本絵画史』 上下巻 編（宝雲舎、1948年）
• - 『東洋美術史』（風間書房、1950年）
• - 『密教発達志』 （国書刊行会、1972年）
• - 『中国美術史彫塑篇』 （国書刊行会、1980年）
• - 『西崖 中国旅行日記』 吉田千鶴子編修（ゆまに書房、2016年）

その豊かな業績と独自の視点からの美術批評は、今日の日本の美術界においても高く評価されています。

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