美術史

美術史の概説

美術史（びじゅつし、英: Art history）という言葉には、主に二つの意味があります。一つは絵画や彫刻、建築などの造型芸術の歴史自体を指し、もう一つはその歴史を研究する学問分野です。美術史の研究は、古代から続く人類の文化や芸術の動きを理解するために重要です。

歴史的展開

16世紀以前 - 旅行記と「列伝」

美術史的記述は、古代から存在していました。パウサニアスの『ギリシア案内記』や大プリニウスの『博物誌』は、当時の芸術や作品に関する記録として知られています。中世ヨーロッパでは、巡礼案内やルネサンス期の都市案内などがこの伝統を受け継ぎました。特に、ルネサンス期にヴァザーリが著した『芸術家列伝』は、芸術家や作品を時代の流れに沿って記述した最初の体系的な美術史書とされています。この作品は芸術の歴史を叙述するための基礎を築きました。

18世紀〜19世紀後半 - 鑑定技術の進歩とイコノグラフィ

18世紀に入ると、美術史は体系づけられた学問として成立しました。特にヴィンケルマンは、地域や時代ごとに整理された歴史区分を示し、様式の展開を論じました。また、19世紀後半にはモレッリが具体的な作品鑑定技術の発展に貢献し、詳細な比較研究を行いました。モレッリは、作品中の人物の手足や耳の形などを分析し、画家の特性を見出し、署名のない作品の作者を特定する手法を確立しました。

20世紀前半 - 様式論とイコノロジー

20世紀に入ると、アロイス・リーグルの様式論やヴェルフリンの理論的な枠組みが導入され、美術史学はさらに発展しました。ヴェルフリンは、特定の時代様式を対概念で定義し、様式の変化を造形上の形式の中に求めました。一方で、ヴァールブルクやパノフスキーは、イコノロジーという新しい方法論を展開し、作品の主題や意味に焦点を当てました。これにより、美術史は作品が生まれた文化や社会の文脈を考慮に入れた分析が行われるようになりました。

美術史批判と方法論の多様化

20世紀後半になると、美術史に対しての批判が高まりました。「巨匠による傑作」に頼るアプローチの限界が指摘され、マイノリティや女性の視点からの分析が求められるようになりました。これにより、「ニュー・アート・ヒストリー」という新たな動向が生まれ、従来の美術史の枠組みが問い直され、より多様な観点からの研究が進められています。

日本の美術史学

日本においても美術史の研究が行われており、多くの美術史家や評論家が活動しています。彼らは美術の歴史だけでなく、美学や美に関する理論も研究し、国内外での美術の理解を深めています。

まとめ

美術史は、芸術の歴史とその研究が融合して形成された学問です。古代から続く美術の記録や分析方法の発展を通じて、現在も多様化し続けています。様式論やイコノロジーなど、さまざまな方法論が確立され、より広範な視野から美術を楽しむための基盤が築かれています。

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