大橋家

江戸時代の将棋家元大橋家：栄光と挫折、そして現代への繋がり

大橋家は、江戸時代の三大将棋家元の一つとして知られる名家です。初代大橋宗桂を祖とするこの家は、将棋界において重要な役割を果たすと同時に、数々のドラマを経験しました。本稿では、大橋家の歴史、家系図、そして現代まで続く系譜を詳しく解説します。

家元制度の確立と危機: 二代宗古の時代、大橋家は伊藤家らと共に将棋家元制度を確立しました。しかし、四代宗伝の早世により断絶の危機に瀕します。伊藤家から養子を迎えることで存続は果たしたものの、その後も伊藤家との関係は複雑に絡み合い、幾度となく存続の危機に直面しました。六代宗銀と伊藤印達との57番勝負における敗北はその象徴的な出来事と言えるでしょう。八代宗桂もまた伊藤家からの養子であり、家系の維持に伊藤家の協力が不可欠であったことが分かります。

名人輩出と家元制度の終焉: 九代宗桂は八世名人となり、大橋家の隆盛を築き上げました。しかし、その後は目立った活躍はなく、明治時代には他の将棋家元と共に家元制度は廃止されました。十二代大橋宗金以降は、家元の権威は維持されたものの、その影響力は徐々に低下していきました。十三代大橋五郎の時代には、関根金次郎を後見に迎えるなど、家元としての運営にも苦慮が見られます。

「大橋家文書」と散逸: 大橋家には、江戸時代の将棋界の実態を知る上で貴重な資料である「大橋家文書」が残されていました。大山康晴の尽力により関西将棋会館に移送されましたが、その後、多数の資料が散逸するという痛ましい出来事もありました。2006年の博物館閉鎖後、残された文書は井岡家（十二代宗金の四女の娘の系統）の強い希望により返還されています。

歴代当主と系譜: 初代宗桂から十五代京子までの歴代当主は、それぞれ独自の功績を残しました。中でも、三代宗桂は献上図式を準備していたことから、次期名人候補であったと推測されています。また、五代宗桂は伊藤家からの養子であり、家系の存続に貢献しました。九代宗桂は八世名人として名を馳せました。十一代宗桂は水無瀬形の駒作者としても知られています。十二代宗金は「御水尾天皇御筆跡の写」の駒作者として知られるなど、その活躍は多岐に渡ります。興味深いのは、将棋指しではない十三代五郎、十四代静子、十五代京子が家督を継いでいる点です。これは、家系の存続を優先した結果と言えるでしょう。

現代への繋がり: 大橋家は十五代で断絶しましたが、十二代宗金の四女の子孫である井岡家が現在も存続しています。この系譜は、大橋家の歴史が現代に繋がっていることを示しています。

墓所: 初代宗桂の墓所は京都の本法寺教行院、三代宗桂以降の歴代当主の墓所は伊勢原市の冨士山上行寺にあります。冨士山上行寺は1928年に東京都より史蹟指定を受けています。二代宗古の墓石については、現在行方不明となっています。

参考文献: 大橋家の歴史を研究する上で、増川宏一氏の著作群は非常に重要な文献です。これらの書籍は、大橋家文書の分析に基づいた詳細な記述がされており、大橋家の歴史を深く理解する上で役立ちます。

結論: 大橋家は、江戸時代の将棋界に大きな足跡を残した家元です。その歴史は、栄光と挫折、そして人々の努力と苦悩に満ちたものでした。しかし、その系譜は現代にまで繋がり、大橋家の歴史は今後も研究され、語り継がれていくでしょう。

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