大沢崩れ

富士山西面の巨大な傷跡：大沢崩れ

富士山西面、標高2200m付近から山頂直下まで続く大沢崩れは、最大幅500m、深さ150mにも及ぶ巨大な侵食谷です。大沢川が長い年月をかけて浸食を続け、現在もなお進行中のこの地形的特徴は、富士山を理解する上で欠かせない要素となっています。

大沢崩れでは、絶え間なく落石音が響き渡り、崩壊はさらに新たな崩壊を招く悪循環に陥っています。1日に275トンもの土砂が崩落しており、これは10トン積みの大型ダンプカー28台分に相当する膨大な量です。この土砂は下方に堆積し、扇状地を形成しています。そのため、土石流などの災害を防ぐための砂防工事が現在も続けられています。

大沢崩れの形成年代は明確には分かっていませんが、地層中に埋まっていた木片の年代測定から、約1000年前には大規模な土砂移動があったと推定されています。このことから、大沢崩れの形成は、一連の断続的な崩壊と土砂の堆積によって進展してきたと考えられています。

富士山には800以上の放射谷や侵食谷が存在すると言われていますが、大沢崩れは特に規模が大きいです。その原因は、大沢崩れが位置する富士山西面の急峻な地形にあります。富士山は地形の輪廻において幼年期にあたり、風化や浸食によって、このような侵食谷の発達は今後も続いていくでしょう。これは異常な現象ではなく、自然な地形の進化過程と言えるでしょう。

登山とアクセス

大沢崩れは、山梨県側の富士スバルライン奥庭駐車場から登山道でアクセスできます。奥庭駐車場から御庭を経由し、いくつかの沢を渡りながら大沢休泊所・大沢崩れ見晴台を目指します。所要時間は、奥庭駐車場から片道約1時間50分～2時間です。

かつては富士スバルライン五合目からも御中道を通ってアクセス可能でしたが、2016年以降、土砂崩れにより一部区間が通行止めとなっており、復旧の目処は立っていません。また、静岡県側の富士山スカイラインからの御中道は、1977年に発生した死亡事故を受け、全面通行止めとなっています。

防災対策

大規模な土砂崩落が続く大沢崩れでは、下流域への土石流災害の危険性も高く、国土交通省をはじめとした関係機関による継続的な砂防工事が不可欠です。大沢崩れの監視や研究、そして防災対策の充実が、周辺地域住民の安全を守る上で非常に重要となっています。

大沢崩れの研究は、富士山という巨大な活火山の地形的変化を理解し、将来起こりうる災害を予測するための重要な手がかりとなります。今後も、継続的な観測と研究によって、より詳細な情報が得られることが期待されます。

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